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NARUTOのイルカシカマルイワシライドウあたりメインのブログサイト。
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「また公衆の面前でそんな本読んで‥‥だから誤解されるんですよ?」
不意に声がして振り向くと、イルカが苦笑して立っていた。
もう太陽は真上に来ているから、昼休みに入ったのだろう。
お互いに「どーも」などと軽く挨拶を交わし、目が合うと照れたように笑った。
「誤解って?」
木陰に座って、先ほどの気になる単語をカカシが聞くと、イルカは顔を赤らめて目を逸らした。
「そりゃ‥‥『はたけカカシは木の葉一のテクニシャン』とか何とか‥‥」
「そ、そんな噂流れてるんですか?」
それは聞き捨てならない。木の葉の里で誰かを抱いたことなんかないのに、
何故テクニシャンなどと呼ばれなくてはならないのか。
「ただの噂ですけどね。でもほんと、そういうの読んでる方は性欲が強いのかと思ってましたが」
「強かったら人前で読めませんよ。
ま、俺は他人に対する性欲がないだけで、ひとりで処理する分には好きですから」
「そうなんですか」
「イルカ先生はしないんですか?」
「え?‥‥いや、俺も、そりゃあ、たまには」
「デショ。ていうかイルカ先生だって、ナルトのおいろけの術で鼻血出したじゃないですか」
「う、そ、それは‥‥身体は反応しますよ。触りたいとかは思わないけど」
「うん、何となくわかりますよ」
カカシが微笑むと、イルカも赤い顔を誤魔化すように照れ笑いした。
その顔には安堵の色も見えて、ああ、うん、わかり合えるって、いいんだな、と
今更ながらカカシは静かに溜息をついた。そして
「自分ひとりで満足できる身体で良かったとか思いません?」
ついポロリと、誰にも言ったことの無い気持ちを口にしていた。
誰にも理解できないとわかっていたから言わなかった。
言えなかった、のだろうか?などとも、カカシは少し思った。
昼間っからするような話題ではないような気がしたが、
もとよりそんなことを心配するような性格ではない。
「ああ‥‥確かにそうですね」
イルカは少し目を丸くしながらも、興味ありげに頷いたので、カカシはさらにもう1歩だけ
自分の深い部分をイルカに知ってもらうことにした。
「わざわざ金払って人に手伝ってもらわなきゃ処理できない奴がカワイソウ。
‥‥いや、世間的に見たら恋愛もセックスも出来ない俺らの方がカワイソウ
なのかもしれないけど」
「はは、自分がいいならいいんじゃないですか。
‥‥うん。それ聞いて、少し自分の身体が好きになりましたよ」
努めて明るく、笑顔で話すイルカだったが、少しだけ声のトーンが下がったのを
カカシは聞き逃すことができなかった。
「それは良かった。てことは、嫌いだったんですか」
『自分が』ではなく『自分の身体が』とわざわざ言ったイルカの気持ちは
今のカカシにはわからなかったけれど。
「嫌いとまで思いませんよ。でもやっぱり普通であることに未練はあります、俺だって」
 
 
見た感じ、どこをとったって「普通」から抜け出したところなんかないイルカが
「普通」に対して未練がある、なんて。
未練?
自分はそんなことを思った時があっただろうか。
物心ついたときから自分は「普通」なんてもんじゃなくて、
常に良くも悪くも一目置かれていて。
それはそれで自分に「個性」「人と違う」という魅力に気付かせてくれたけれど。
もし、自分が「普通」の人間だったら?
アカデミーへ行って、同年代の忍びと組んで、中忍試験に手こずったりして。
異性に恋をして、経験して、結婚して、子を成して。
そうしていたら、自分には何が見えていたんだろう。
今の自分に見えていない何かが?
それは、今見えているものよりも正しく美しいのだろうか?
今見えているものは間違っているのだろうか。
何年か後に、あのときの自分はバカだった、なんて後悔するんだろうか‥‥
例えば今の自分が、慰霊碑の前で思うように。
 
 
 
たまにはイルカと昼間に遊びに行くのもいいかな、などと思い
その約束を取り付けるためカカシは受付へと出向いた。
しかしイルカの姿はそこにはなく、代わりの職員が座っているだけだった。
はたけカカシだ、写輪眼の人だ、などと薄い声が聞こえるのをやり過ごして
「イルカ先生は?今日は休みだっけ」
と顔見知りの受付に訊ねると、
「ああ‥‥イルカなら、さっき早退しましたよ。気分が悪いとかで」
と教えてくれた。
礼を言って受付を出、気分が悪いイルカはどこへ行ったのだろう、と考える。
そりゃあまず間違いなく家に帰るだろうけれど、
イルカの家はアカデミーから少し離れた場所にある。
まだどこかで休んでいるかも知れない。
何となく近くの手洗い場に寄ってみることにした。
ここでイルカに会ったことが何度かあると思い出しながら。
すると、勘というのは当たるときは当たるもので。
「あ」
「あ」
入ってすぐのところにイルカがいて、顔を洗い終えたところらしかった。
お互いに間の抜けた声が出て、重なる。
「カカシさん‥‥」
「大丈夫ですか、早退したって聞いて」
しかしカカシが顔を覗いたとき、イルカは気まずそうに目を逸らした。
「‥‥なんかあったんですか」
イルカのこんな反応は見たことがない。
いつもはっきり感情を露わにして、言いたいことは言う、真っ直ぐのイルカが
何か言いかけた口を閉じて、視線を床に落とすのをカカシはただ目で追っていた。
「誰かになんかされたとか、言われたとか?」
「‥‥いえ」
イルカは力なく首を横に振って、やっと顔を上げて無理に笑ってみせた。
「ちょっと、何で自分がこんなショック受けてるのかわかんないんですけど」
場所を移動しながら、
イルカの目が濡れているのは、今顔を洗ったばかりだからだと思い込むことにして
カカシは黙って話を聞いた。
「あー‥‥知り合い‥‥割と昔から知ってる人なんですが
俺、もしかしたらその人のこと、好きだったのかも知れなくて」
太陽の下、気持ちの良い風にさらされながら、イルカはぽつぽつと話した。
「好きっていうか。別に何かしたかったわけじゃないけど。
強いて言えば、手‥‥手に‥‥手をつなぎたい、とか思うことがあった、くらい‥‥。
恋愛感情なんてもんじゃないと思ってて。
でも昨日、その人が恋人と歩いてるの見て、わかんなくなっちゃって。
俺は‥‥もしかしたら、好きだったのかも知れない。
抱きたいとか抱かれたいとか無いだけで
あれは恋愛だったのかも知れない‥‥とか‥‥思って‥‥。
はは、それで昨日の夜眠れなくて、寝不足で気分悪くなったってだけです。
忍び失格ですね、こんなの」
ときどき震えていた声を打ち消すように、イルカは最後わざと明るい声を出した。
カカシはそんな気遣いをさせてる自分に少し苛立ったりもした。
「いや、ていうか、うん、今はカカシさんと恋愛しようって
ちゃんと思ってる、つもり‥‥なんで‥‥すいません」
黙って聞いていたカカシだが、んー、と少し間を置いて、
できる限りいつもの調子で聞こえるように話し始めた。
「別にねえ、イルカ先生が他の人に恋しようが愛しようが俺はかまわないんですよ。
俺のこと好きだって思ってくれてるならそれで。
いや、それも無理にとは言わないですし。
だから、好きだったのかもなんて言わなくていーんです。
好きだって言っちゃっていいんですよ、その人のこと」
のんびりと話し終わると、イルカはきょとんとした顔で
「いいん‥‥ですか、それで」
と気の抜けた声を出した。
「いいんです、それで」
「‥‥自由だなあ。俺も、独占欲はそんな強くない方ですけど」
イルカの視線が宙に逸れたので、カカシはまたのんびりとした口調で言った。
「何て言うか。俺は嫉妬だの独占欲だの、束縛だのっていうのは
相手のことが好きなんじゃなくて、相手に好かれてる自分が好きなんじゃないか、
って思ってしまうんで」
イルカの目がまたカカシの方に向いた。
まんまるになっていたそれはすぐに弓なりに薄く笑って、
再び空の雲のもっと奥の方を見るために向きを変えた。
その様子をカカシも右目で追って
それに、と続けようとした言葉を飲み込んだ。
 
それに、俺は。
自分ひとりでアンタを満足させる自信が、俺には。
 
 
 
泣かれなくて良かった、なんてホッとしていることを
イルカには悟られたくないと思った。
泣かれたら自分はどうしていいかわからなくなるから。
どうしたら相手が泣きやんでくれるかわからないから。
人を喜ばせるすべを知らない自分への言い訳は
早くに親を亡くしたとか早くから戦場にいたとか生まれた時代が悪かったとか
いくらでも思いつくのだろうけれど
そんなことを話したところで、誰かを笑顔になんか。
涙を見ていなくても、少し前まで相手が泣いていたことくらいわかっていたのに
それでも抱きしめて頭を撫でてやることができなかった。
優しく頬にキスをしたら、イルカは喜んでくれたのだろうか?
もし自分がされる側なら。
嫌ではないにしても、喜びより戸惑いの方が強いのではないか‥‥
そもそもほんの少し触れるだけでも拒絶されたら。
怖くて、出来ない。
せっかくの理解者を、ただの一瞬の過ちで失うことだけはしたくない。
イルカを失うことを、初めて怖いと思った。
それはもうひとりの自分を失うようなものだったから。
 
 
 
「なーんか、俺の考えばっか話しちゃってますね。イルカ先生のも聞かせてくださいよ」
「ん、うん、そのうち。そうだ、明日って空いてませんか?」
「あ、そう言えば。明日の昼、飯でもどうですかって誘いに来たんでした」
「はは、じゃあご一緒させてください。どこ行きましょうかね」
「どこがいいでしょうねえ」
 
 
 
 
 
(続?)
 
インターバルあった割に‥‥。
イルカ視点でもう1話分くらいと
せいぜいあと1、2話だろうかー。
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きゃ!お返事とお話の続き、ありがとうございます!触りたくても触れない~?じりじりした感じが良いですね!更新、楽しみにしていますね!
キリ 2008/04/26(Sat)01:10:55 edit
コメントレス>キリ様
わー読んでいただいてありがとうございます(´∀`)
いやほんと1話目と雰囲気だいぶ変わってしまって申し訳ないです‥‥
じりじりもんもんしてんのがカカシさんにはよく似合うと思います。
次も頑張って書きます、期待せずにどうぞ!
いちかわ(管理人 2008/04/27(Sun)03:27:58 edit
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