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いつだったか、正確にはもう忘れてしまったけど、任務報告書をアナタに出す日が続いていた頃のことです。
判を押すアナタの手に触れたいと思いました。
漠然と、何となくね。
忍びなのに綺麗な手をしてるなあ、って。その時は、ああ、内勤なら血に染まった手を一晩中洗い続けることなんかないよなあ、なんて少し羨ましく、少し妬ましくもなったんです。
でもすぐにそんなこと思わなくなりました。
「お疲れさまでした」のアナタの笑顔が、暗部上がりの俺にはあたたかすぎたから。
何となくアナタを目で追うようになりました。
教え子つながりで知り合ってからは、そんな俺と目が合うと笑顔で会釈してくれましたね。
それが嬉しくて、いつもアナタの気配を探していました。
自分の気配を消すのが下手になった気がします。
波の国から戻ってすぐでしたか、いつも通り報告書をアナタに渡して、俺はアナタの手に触れたいと思いながら、そうできないことはわかっていたからずっとポケットの中に手をつっこんでた。
アナタはナルトがどうしてるか、仲間とうまくやれてるかどうかを聞いてきましたね。
傷痕を掻きながら、照れたように元教え子を案じるアナタに、俺は耳が熱くなるのを感じました。
そんなことは初めてだった。俺はつい目を逸らしました。
そんなことは初めてだった。俺はつい目を逸らしました。
少し意地悪のつもりで、ナルトはどんどん実力を伸ばしていますよ、アナタに追いつくくらいに、と言った覚えがあります。
アナタは心底嬉しそうに、そうですかと笑いましたよね。一回りも年下の元教え子に追いつかれる危惧など少しも見せずに。
俺はあの時ほど、顔の大部分を隠していて良かったと思ったことはありません。
だって木の葉の里を代表する「写輪眼のカカシ」が、受付の中忍の笑顔で真っ赤になってたら、もうイメージがたがたじゃないですか。部下にも示しがつきません。
アナタに会って話すのは、ナルトや子どもたちのことばかりだったけど。
アナタの笑顔が見られればそれで良かったんです。
その笑顔が誰に向けられたものかなんて、気にも留めなかったんです。
自分勝手デショ?
そんなことを思ってたくせに、その時はまだアナタのことが好きだなんて認めませんでした。
アナタを探して、立ち姿を見て、声を聴いて、触れたいとまで願ったのに、その理由に「アナタが好き」以外のものを当てはめようと必死でした。
今日はちょっとだけ寒いから、とか、水場での任務で冷えちゃったから、とか、適当な言い訳を探して、だから屋内で仕事してるアナタの手を握ったらあたたかそうだなんて思うんだな、と。
自分に言いきかせるように。
暗示をかけるように。
自分に言いきかせるように。
暗示をかけるように。
認めたくなかった。
一時の気の迷いだと思い込んだ。
そうなら良かった。そうであって欲しかった。
自覚してしまったらもう戻れないような気がしたんです。
いや、気がしたどころか、確信していました。
きっと俺はアナタに夢中になると。
ま、そう思ってた時点で既に夢中になってたんじゃねえかとも思いますが。
それに俺達には障害が多すぎる。
挙げるまでもなく、わかっていました。
俺にはアナタの側にいる資格がないということ。
痛感したのは、7班の3人を中忍試験に推薦した時です。
アナタもあのことは覚えているでしょう。
俺は俺なりの考えを言ったつもりです。今でも間違ってるとは思ってないし、後悔もしていない。
それでもアナタの一言は、俺にはずしりと応えました。
「ナルトはアナタとは違う」
どれだけ俺の心をかき乱したか、アナタは全く知らないでしょうね。俺は負の感情を抑えるのは得意ですから。
まさに痛恨の一撃というやつでしたよ。
俺はね。
アナタとナルトは、俺とは違う次元を生きてる人のように感じました。
どんなに手を伸ばしても、決して届かないところにいる人だと。
一緒にはいられないのだと。そう言われた気がしました。
「ナルトはアナタとは違う」ってのは、つまり「俺はアナタとは違う」ってことでもあるんでしょう?
ああ、うん、うすうす気づいてたことですけどね。
それでもアナタの口から聞いたら、さすがの俺も落ち込みました。
あの時から俺は戻れなくなったんですよ。
アナタと俺の違いを、痛みを伴って教えられたにも関わらず。
手が届かないとはっきりわかった途端に、アナタが愛しくて愛しくてたまらなくなりました。
まったく皮肉な話です。
あれほど頑なに、アナタが好きだと自覚するのを避けていたのに。
避けていた理由は、アナタと俺が違いすぎるからだったのに。
俺の視線が手から他に移ったのに気づいていましたか?
ああ、俺が手を見ていたことも知りませんでしたか。そうですよね。
綺麗な手に触れてみたいと思うだけだった俺が、それを切実に願うようになって、想像では飽き足らなくなって。アナタの何の変哲もない耳や唇や顎、首筋なんかにも触れたくなって、口づけたくなった。
それ以上のこともたくさん考えたけど、言うとアナタは引いちゃうだろうからやめておきますよ。
それ以上のこともたくさん考えたけど、言うとアナタは引いちゃうだろうからやめておきますよ。
おかしいデショ。俺だっておかしいと思う。
たかが内勤の中忍風情に、自分がここまで欲情するなんてね。
それでも止められなかった。止めたいとも思いませんでした。
アナタに酔うのは、酒に酔うよりもっとずっと心地よくて、幸せでした。
届かないと思う胸の痛みすらも、俺に生の喜びを実感させました。
さっきからアナタが内勤で中忍であることを嘲るようなこと言ってますけど、俺はアナタが内勤で中忍であってくれて嬉しいんですよ、ほんとは。
心の奥底から、良かった、と安堵のため息がもれるほど。
心の奥底から、良かった、と安堵のため息がもれるほど。
これでアナタが暗部にでもいたら気が気じゃない。
任務から戻ってきたら、アナタが笑顔でいるから。
あの口論の後も変わらない笑顔で「お疲れさま」と言ってくれるから。
だから俺は里に生きて帰ってこられるんです。
俺は暗部にいたような人間です。
人を幸せにするすべを学んできませんでした。
殺めるという、人を最も不幸にする技ばかり身につけてきました。
それが結果としては里の人間を幸福にするにしても。
今の俺には、里の未来よりもアナタの一瞬の方が何倍も大事なことなのに。
アナタをひとときでも幸せにできるなら、そのために俺の一生を捧げても構わないとすら思ってるのに。
やっと俺の気持ちがここまで来たんだ。
最初はただ触れたかった。
笑顔が見たかった。
見ているだけで良かった。
愛想笑いでも構わなかった。
それがついに、アナタを幸せにしたい、までたどり着いたんです。
相当な進歩だと思いませんか?
アナタをおもう気持ちなら
他の誰にも、3代目火影様にもアスマにも、ナルトにだって負けない自信があるってのに。
他の誰にも、3代目火影様にもアスマにも、ナルトにだって負けない自信があるってのに。
好きというだけでは足りませんか。
愛してる、だけではアナタを幸せにしてあげられませんか。
どうして、アナタを幸せにできる人が俺ではいけなかったのですか。
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ああ、そろそろ目を覚ますことにします。周りも心配してるようだしね。
滅多に夢を見ない俺が、アナタを想いすぎてこんなこと喋っちまいました。
光栄に思いなさいよ。
くやしいから、現実のアナタに想いを伝えるのはもう少し待ちます。
いつになるかはわからないけど。
それでもアナタは聞いた後、俺に笑いかけてくれますか。
(了)
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