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【新人歓迎会】―『新人』を『歓迎』するとは名ばかりの、『先輩』『上司』が『新人』をダシに面白可笑しく楽しむための宴。また、その集まり、酒宴。
オレが辞書を編纂する様な事があれば、この項目をぜひとももうけたい、と常々思う。そして、世知辛い大人の世界に片足を突っ込もうとしている奴らに、そっと示してやりたい。酒と場の雰囲気には呑まれるな、回りの奴らはオマエが思っている以上に無責任だからな!!と。
今更ながら、なぜオレがこんな事を考えているのかというと、今年は無いと思っていた新人歓迎会が催される事になったからだ。
今年は近年まれに見る大惨事に里が見舞われ、あわせて三代目も急逝なされた。そんなバタバタとした慌ただしい中で、中忍に昇格したのはたった1名だけ。こんな状況では毎年恒例のばか騒ぎも無いだろうと、当然の事のようにタカをくくっていたのに。今朝方、ド派手な紙を抱えた知らせの鳥が飛んできたんだよ。
こんな早朝に何事だと思って広げてみれば、黄色味かかった紙に極太の墨筆で新人歓迎会開催の詳細が書かれており、幹事としてカカシとイビキの名前が書かれていた。これはもう、半分以上脅しに他ならないだろう、とその署名を見た瞬間に呆れた。後者は生粋のサド公爵だし、前者は変態&自己中の星からやってきた王子様ときている。任務も無いのにトンズラでもしようものなら、その後の人生を暗黒に変えられることだろう。実際、そんなめにあったヤツを2、3人ほど知っている。オレも二次被害にあいそうになったから忘れるわけがねぇ。
仕方が無いので予定表を広げてみれば、狙ったかのように任務も予定も入っていなかった。綺麗に真っ白。そして次の日からは長期任務がコンニチワ、だと…。
オレは寝癖のついた頭をかき回して、一つの結論に達した。五代目に頼んでこの日に何か任務を入れてもらおう、と。あんな半ば人外魔境と化す化け物宴会の次の日に長期任務なんかやったら、それこそ疲労困憊で参っちまう。
そんなわけで、オレはいつも以上に気合いを入れて火影の執務室へと向かっていた。しかし、脳内には過去に繰り広げられた散々な事柄が脳内をかすめていき、胃のそこから酸っぱいものがこみ上げてきそうだった。
お節介かもしれないが、今回生け贄になるであろうアスマの教え子に、先ほどオレの脳内にわき上がってきた心得だけでも授けて行こう。絶対に、お子様だとか罵られようが、決してアスマの隣を離れるなと。アスマがカカシに捕まったらそんときは紅姐さんの後ろに逃げ込め、という秘策もおまけに付けといてやろう。
オレに出来る事はこんなもんだろう、と考えを改め、今度は自分の未来を掴み取るためにオレは執務室のドアを勢い良く開いた。
………、所詮、考える事は皆同じってか。
挨拶もそこそこに、『休みはいらないから任務くれ、いや、むしろ下さい』と五代目に切り出したら、お前でもう十人目だと呆れがちに返された。お陰で宴会前後の中、長期系の任務は全て品切れ。オマケにオレが入る筈だった任務にも他のヤツが割り込んだらしく、有り難くもない休みまでいただいてしまった。
本来だったらそんな事はあり得ないのだけれど、その事を願い出たヤツがあんまりにも必死の形相で懇願してくるので仕方が無かったのだ、と教えられた。
そりゃ、そうだろうよ。アレに参加するぐらいだったら、はっきり言って激務をこなしている方がマシだ。体につく傷と違って、精神的なトラウマは消えないからな。
オレも絶対に任務が欲しいんです、とは流石に言えなくて、そのまま待機所に直行して普段は吸わない煙草を思いっきり肺の奥にと送り込んでやった。そうでもしないとやってられねぇ。
貯めに貯めた煙をコンチクしょうとばかりに吐き出せば、これまた沈んだ顔をしたアスマがのっそりと入ってきた。莫迦みたいに煙を吐き出すオレを意外そうな表情で見つめると、どっかりとアスマはオレの隣に腰を下ろす。
「ライドウが此処で煙を吐き出してるなんて、珍しいな」
「今朝方、ご大層な鳥さえこなきゃ、こんな事してねえよ」
「ああ、アレな。つーことは、出られるのか」
「任務、取られちまったからな。不本意だけど出席するつもりだ」
「……、そうか。なら、一つ頼まれてくれねえか。礼なら『何でも』するからよ」
普段は暢気の固まりの様なアスマの切羽詰まった声に、オレは煙を吸い込むのを止めてアスマを見た。
「なんだよ、頼みって?」
「今回の『生贄』の面倒を頼みたいんだよ。オレはどうしても抜けられない任務が入っちまってな。どう頑張っても、宴が終わる頃にしか帰って来れそうにねえからさ」
先ほどのアスマの沈み顔の理由を知ったオレは、哀れみをこめて言葉を吐き出した。
「ソイツはお気の毒。お易いご用だと言ってやりたい所だけど、完遂する自信は無いぞ。オレより紅に頼んだ方が確実じゃないか?」
紅は上忍に上がってまだ日も浅い方だが、こと『酒』の席に関しては玄人だといってもいい。まず、酒は何を呑んでも酔わないし、酔っ払いのあしらいも上手い。というか、あしらうというより蹴散らす、と言った方が正しいかも知れない。紅に向かってセクハラ発言などしようものなら、逆に奈落の底に突き落とされること必死。『漢女』書いて『おとめ』と呼ばせて下さい、と何度思ったか知れない。
そんな最強『漢女』を差し置いてなぜにオレ?と首を傾げれば、アスマはこれまた重々しい溜息をつきながら「アイツも抜けられない任務があるんだと」と言った。
「………、最後の砦様、いらっしゃらないの?」
「あぁ。だから今回の宴の最後の理性であるライドウ、いやライドウ様、どうかシカマルの貞操だけでも守ってやってくれ……」
「…………、善処します……」
必死に頼み込んで来るアスマに、オレはこういってやるので精一杯だった。
普通の新人歓迎会と言えば、幹事やエラい人の言葉の後に『新人』から一言抱負などを言ってもらって始まるものなのだろう。『だろう』というのは、オレがその手のマトモな歓迎会に出た事が無いため、あくまで推測の域を出ないからだ。
でも、絶対にここで繰り広げられている『モノ』は『普通』とは言えないと断言出来る。そうじゃなけりゃ、世の中気違いだらけだ。
改まった挨拶もそこそこに、イビキの『乾杯』の挨拶を合図に宴会は始まった。始まってまだ三十分も経っていないのだが、彼方こちらでひっそりとエンジンがかかりはじめている。だいたいにして、今回出席している連中が連中なだけに、先行きは予測不能の暗黒だ。
アンコは大ジョッキ(中身はビールじゃない)片手に笑っているし、イビキは何気にサドっけ全開だし、カカシは…見るのも嫌だな…。コテツとイズモのコンビも無害そうに見えてアレだし…。ゲンマとアオバは当てにならねぇ。エビスやガイ、イワシにトンボ辺りはまだ大人しいが…、酔いが回ると別だからな…。
大きな広間の片隅には、医療班の連中とこの宴会において『一般人』と形容してもいいような連中が『中央』の動きに気を配りながらひっそりと呑んでいる。できればオレもあそこに入ってのんびりと酒が呑みたい…。
いやいや、とオレは現実逃避しかける脳みそを引き止める。オレの隣にちんまりと収まっているアスマの教え子を守り抜かなくては。多感な思春期まっただ中の少年の心に消えないトラウマが刻まれちまう。
心の奥底で気合いを入れなおしていると、ツンと服の端を引かれた。何事かと視線を僅かに下げれば、思案顔のシカマルと視線が合う。
「どうした?」
「あの、オレって酌とかしなくてもいいんすかね?」
「あぁ、みんな好き勝手に呑むのが好きな連中だからほっといていいぞ」
にっこりと余裕の笑顔でシカマルに答えた次の瞬間、オレの脇を凄いスピードで『何か』がかすめていった。
あぁ、始まりやがったか……。
引きつる表情をどうにか押さえ込み、『何か』を確認するために顔を向ければ白目をむいたガイがオレの後方数メートル先に転がっていた。手には大きめのジョッキが握り込まれており、『何が』あったのかは一目瞭然。
一応、ガイに声をかけるか否かと考えていると、豪快なアンコの声が広間に響き渡った。
「あははははは!!なっさけないわね~!!これで呑み比べはアタシの99戦99勝!」
普段は色素の薄い頬を紅潮させながら、アンコは自分がぶっ飛ばしたガイを指差し心底嬉しそうに笑っている。毎回思うのだが、なんでぶっ飛ばすのかは謎だ。アンコの勝ち名乗りに続いて外野からは賞賛の声やらなにやらが飛び交う。
部屋の隅にいる医療班の連中にガイを頼もうかと視線を送れば、すでにガイは回収済みとなっており、顔見知りの一人が満足げに親指を立ててみせた。毎回毎回本当にすまん…。
「なんスかアレ…」
驚いていると言うより、呆れたような声色でシカマルは聴いてきた。
「あ、アレか。アンコとガイは飲み会の度に勝負しててな。そんで、毎回、ガイが負けてああなってるんだ。うん、気にすんな」
あははは、と乾いた笑いで誤摩化そうにも無理がある。その後に、ボソッと「もっと酷くなるから、此処から動くなよ」と付け足せば、若干表情を曇らせながらもシカマルは大人しく頷く。そんなシカマルがなんとなく不憫で、小さな肩を励ますように叩いてオレの茶碗蒸しを譲ってやる。こんなんで気が紛れるとは思わないがな。
するとシカマルはきょとん、とオレを見上げて来る。
「あれ、茶碗蒸し嫌いだったか?」
「そうじゃないけど、いいんスか貰っても」
「ああ、ちびっ子はいっぱい食っとけ~。そうしないとデカクなれないからな」
半ばからかうように言えば、シカマルは表情を緩め「ちびっ子じゃないっスよ」と笑った。そういや、笑った顔初めて見たな。笑った顔は歳相応にあどけなくて、以外と可愛いじゃないか。
そんなシカマルにつられて表情を緩めようとしたら、左肩の当たりにもの凄い重みが……。ついでに、すんげー酒クサッッ。
「あ、ライドウサン、オレと言うものがありながら、新人に色目使うなんて~、酷いわッ」
カカシ……。いつもながら、お前の絡みは質が悪いんだよ…。シカマルが勘違いしたらどうすんだ。だいたい、取ってつけたように『サン』なんてつけんな気色ワリぃ…。
ウフフフ、と気色悪く蛸のようにオレにしがみついてくるカカシを引きはがし、ゲンマのあたりに放り投げて振り向けば、どこから湧いて出たのか知らないが、アンコがシカマルの口に吸い付いていた。そりゃもう、ガッツリと…。
「こ、っっんの莫迦アンコ!!おまッッナニしてんだ!?」
一瞬灰になりかけた自分をなんとか呼びもどし、キスしてると言うより『口から喰ってます』的なアンコをシカマルから急いで引き離す。ああ、グッタリしちゃって……。シカマルの顔は羞恥に染まるより前に、酸欠のせいか血の気が引いている。どうしてくれるとばかりにアンコを睨みつけてやれば、悪びれもせずに、口許を僅かに尖らせながら
「だってさ~、アタシの酒が飲めないって言うから。グッと呑ませてあげたわけよ、アタシってばやさし~から」と宣った。
「オマエ……、あのな…」
「なによ~、なんか文句でもあるわけあ、エビス!アタシの酒に手ぇ出すな!!」
うん、もう早々に立ち去ってくれ…。説教する気さえ起きねぇ…。
一升瓶を抱えながら飛び去って行くアンコを確認すると、オレは腕の中で伸びているシカマルに声をかけた。
「おい、大丈夫か、シカマル。生きてるか…」
「………、かろうじて…。つーか、気持ちワリぃ…ヒック」
先ほどまで血の気の引いていたシカマルの頬には僅かに赤みが差し、切れ長の目はとろんとなっている。なに呑ませやがったんだ、アンコのヤツ…。
くてっとオレに寄りかかっているシカマルに断りを入れてから、口許の香りを嗅いで見る。……、こりゃ、ジンだな。しかも、度数がいきなりキッツイのだ。
呑まされた量は多くてもたかが知れているが、流石にこの場に置いて置くのは危険だろう。それに、ちょうどアンコが騒ぎを起こしはじめたから、今なら抜けたってバレない、ハズ。
くったりと伸びているシカマルを背中に背負い、オレはこれからさらに酷くなる宴会場を後にした。視界の端に涙目になっている医療班の連中を確認しながら…。
少しばかり冷たい夜風の中を、シカマルを背負いながらのんびりと歩く。はじめは『降りる』と主張していたシカマルだったが、段々と酔いが回ってきたのか今では大人しい。流石に表通りを歩けば恥ずかしいだろうと思い、人気のない裏路地を選んで帰ることにした。
なんとなく無言でいることが気まずくて、そっとシカマルに話しかけてみた。
「大丈夫か?」
「なんとか、つーか、すんません…」
「謝るんならオレの方だ。驚いただろ、ホントに節操なしな連中で」
「はぁ。酒呑むと人って変わるって聞いてたけど、ホントなんスね」
「アイツらは特殊な例だからな、参考にすんなよ」
「あ、そういやアスマもあんな感じなんスか?」
「ん?アスマ?アイツは普段と変わらねぇよ。のらりくらり、って感じかな」
そうですか、と一言もらすと、シカマルはくてっとオレの首筋にもたれ掛かった。眠くなってきたのだろう。首筋にかかる吐息がこそばゆかったけれが、オレはシカマルを落とさないように抱えている腕に力をこめた。
しかし、背中に背負った重みはあまりにも軽くて、なんだか心もとない。これから独り立ちするにはまだ早いような気さえする。しかし、みなそうなのだと思い直す。それに独り立ちしたからと言って、全くの独りではないのだから。はっきり言って今回の飲み会での印象は最悪だと思うが、任務となればアイツらだって頼りになる。アイツらから色々と学んで成長していけばいい。時間は沢山あるのだから。
そう言えばコイツの家はどこだったか、と背中で寝息を立てはじめているシカマルに確認しようとすれば、クセのある紫煙の香りが鼻先をかすめていく。アスマってこんなに過保護だったか?
前方の暗闇に目を凝らせば、橙色の光がチカチカと瞬きながら段々と近づいて来る。数分もしないうちに、少し息の上がったアスマの姿が暗闇に浮かび上がってきた。
「よ、任務無事に終わったのか?」
「あぁ、速攻で。それでシカマルは?」
「すまん…。完璧には守りけれなくてな…、アンコにちっとばかし、な」
心配げにオレの背中を覗き込んで来るアスマに謝罪しながら、アスマに見えやすいようにオレはシカマルの体をそっとずらした。
「もしかして、コイツ酔っぱらってんのか?」
「ああ、少し呑まされちまってさ~…。ホントにすまん」
「いや、そんだけですんだらいい方だ。こっちこそ気を使わせちまって悪かったな」
流石にどう呑まされたかは、言えねぇ…。シカマルの名誉のためにもな。
「後はオレが預かるよ」
それだけ言うと、アスマはそっとシカマルを抱き取った。抱き取られたシカマルは僅かに身じろぎすると、ぎゅっとアスマにしがみついた、ように見えた。あ、なんか今、胃の辺りがチクッとした。いや、胸かな。
おかしいな~、刺身にでも当たったか?
胃の辺りを擦ってみるも、もう痛みは無く微かな空腹感があるだけだ。
自分の変化に疑問を感じつつも、シカマルが冷えるといけないのでさっさとアスマを帰らせた。小さなシカマルを大事そうに抱きかかえて行く様は、なんだか優しい熊サンのようで微笑ましい。アイツもだいぶまるくなったもんだ。
さて、と。オレは後片付けってヤツをしないとな。
シカマルの温もりが消えてしまった背中を少し寂しく思いながら、オレは足取りも重く修羅場へと帰って行った。
ライシカ‥‥!ライシカですよ。ヘタレな片思いらしいですよ!
今自分の中ではシカマルのファーストダーリンはライドウさんなんですが
それはクロ雨蛙様のせいですのでご了承くださいね!(責任転嫁
他のサイトでもときどき見る「たまに煙草を吸うライドウさん」という設定が妙にツボです。
でもきっとシカマルの前では吸わないです。別のものを吸います。
CP要素がなくても人を萌えさせることのできるクロ雨蛙様のサイトへは
リンクから是非ともトンでくださいね(´∀`)奈良親子や10班も素晴らしすぎます!!