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NARUTOのイルカシカマルイワシライドウあたりメインのブログサイト。
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暗く深い森の出口がようやく見え始めたところだった。
女の子が、うずくまって小さな泣き声を上げている。

もうとっくに日が暮れていることと任務明けの疲労のせいで顔はよくわからない。
出口はうっすら見えているのだから、道に迷ったわけでもなさそうだ。膝を抱えている。転んで怪我でもしているのだろうか。

無視して通り過ぎれば良かったのだが、先ほど腕に刺さったクナイを引き抜いたせいで血が滴り落ち続けていて、それを浴びた草がかさかさと音を立てた。
女の子は敏感にもこちらに顔を上げ、カカシの姿を認めて絶句し、硬直した。――無理はない。今は暗部服にあの怪しげな面をつけているのだから。抜いたクナイをそのまま持っていたせいもあるだろう。
声も出せず恐怖に震えている女の子に、カカシは近づいた。危害を加えるつもりはない。よく見ればカカシが中忍になった頃くらいの年齢だ。

微妙な距離を取って、女の子の前にかがむ。やはり膝を怪我している。それほど出血はしていないから心配ないが、足首も押さえていることから、挫いたか何かして歩けないのだろう。
このまま見捨てるのも夢見が悪いし。
任務ではこれまで何人も子どもを殺めてきたカカシだったが、その罪滅ぼしというか、やはりどうしても罪の意識は常にあったので、せめてこういうときくらい善いことをしておいた方がいいのかなあ、と思わないでもなかった。まあそこまで深刻に考えるでもなく。カカシは応急処置の道具を取り出した。
 
 
いきなり、頭に強い衝撃が走った。
それが右側から来たことと、何やら怒声も一緒だったことしかカカシは覚えていない。
その声は「俺の生徒に何してやがる!」とかだったと思う。
 
 
数分ほど意識をなくした。回復したとき、声の主は女の子の膝の手当を終えていた。
事情を聞いたらしく男は済まなそうにカカシに声をかけた。
「あの‥‥す、すいません。大丈夫ですか」
あれだけ思い切り蹴り飛ばしておいて(覚えてないが多分蹴りだった)大丈夫も何もない。
「ごめんなさい。俺、あなたがこの子に何かしたのかと勘違いして。本当にすみません」
と真摯に頭を下げた。
てっぺんに揺れるしっぽ髪に、顔を横切る1本の傷痕。年の頃はカカシよりひとつふたつ下くらいだろうか。
「いいよ。アンタみたいなののトロい蹴りを避けられなかった俺がどうかしてた」
カカシは冷ややかに言った。
男はむっとして――はいなかった。
女の子がなかなか泣きやまないので、抱き締めて「よしよし、いい子だから」だの「もう怖くないぞ、先生がついてるからな」だの優しく言って、カカシの言葉など聞いていなかった。
 
おいおい、この暗部服が見えないのか?
 
その様子を呆れて見ていると
「怪我してるじゃないですか」
と男が言った。女の子を見ながらの言葉だったので、カカシは最初自分のことだと気づかなかった。
腕の痛みはさっきの衝撃でほとんど感じなくなってしまっていた。
「見せて下さい」
今度はしっかりカカシを見て言う。
「いや、これは別に‥‥」
「見せてください」
「自分で」
「いいから見せなさい」
「‥‥ハイ」
 
な、なにこの人。コワイ‥‥。
 
何故か逆らえない。
「ちょっと待っててな」
と女の子に言い、彼女を膝に乗せて抱きつかれた状態で男はカカシの腕の止血を始めた。
「アンタ、教師なのか」
「ええ。研修中ですけどね」
手慣れた動作で処置はすぐに終わった。
男はもう1度改まって謝罪したが、カカシはそれでは収まらず、ちょっとからかってやろうと思いついた。
「ほんとに悪いと思ってるならさ、ちょっと俺の相手してよ」
「はあ」
男はきょとんとしている。
「俺、任務の後でたまってんの。2、3発抜かせてくれる」
「は」
言いながら、男の手を自分の股間へ誘った。
 
「子どもの前で生々しいことするんじゃねえーー!!」
「グフゥ」

 
今度は見事な裏拳が左頬に入った。カカシは今まであげたことのない声をもらしてその場に倒れ込んだ。
「俺はうみのイルカ、中忍で、アカデミーの教職の研修してます。アカデミーに来てうみのって言ってもらえればわかりますから。怪我が治ってからゆっくり来てください。そん時きっちり詫び入れます。それでいいですね」
男はカカシの返事など聞かずに女の子を抱き上げ、
「さあ、サクラ、帰ろう」
とさっさと森の出口へ歩いていってしまった。
 
「うみの‥‥イルカ?中忍だと?冗談じゃない。2度とあんな危険な奴に会うもんか」
 
 
 
カカシがイルカに再会したのはそれから5年後のことだった。
イルカはもちろんあの時の暗部がカカシだと知らずに(おそらく覚えてもいないだろう)人の良い笑顔を向けていたが、カカシは終始口元を引きつらせていた。
口布のおかげでイルカがそれを知ることはなかったけれど。
 
ナルトのことを話すときのイルカは、あの夜女の子相手に見せた優しい笑顔を満面に広げていて、それはカカシの心にも安堵を与えた。
第一印象は最悪くらいがちょうどいい、のかもしれない。
そんなことを思ったとき、カカシは見てしまった。
 
「アスマ先生、子どもの前で煙草吸うのはやめて下さいと言ったでしょう!」
イルカの怒声――カカシはとっさに気配を絶って、見えないところに隠れた。
「ああ?そりゃ嘘だ。俺が聞いたのは『やめて下さい』じゃなくて『やめなさい』だぜ」
「じゃあやめなさい!」
そう言ってアスマのくわえていた煙草を、何でもないゴミであるかのように平然と握りつぶした。
 
1000℃近いと言われる火のついた煙草を。
 
素手で。
 
見ていたアスマ班いのシカチョウトリオはドン引きだった。
その引き具合といったら、まだガイとアスマが青春してた方がマシというものだ。
 
イルカのチャクラの性質は火なのかなと考えつつ、握りつぶしたとき特別強いチャクラを感じなかったことを思い出して、今度イルカを飲みに誘ってみようかと思っていたカカシは、やはり考えを改めることにした。
 
 
 
 
 
(了)
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