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柔らかな夕日が差し込むアカデミーの教室。ほとんどの生徒たちが帰宅し終えたがらんとした教室に、ちんまりと寄り集まっている三つの影。その手には一様に華奢なツートンカラーの縦笛が握られていた。それはいわゆるリコーダーという楽器で、比較的簡単に誰でも音を出すことが出来る代物だ。息を吹き込んでやれば、必ず音は出る。そういった楽器であるにもかかわらず、笛を掴んでいる約二名からは、まるで『宿敵と対決』とでも言うような雰囲気が漂っている。
ぽっちゃり少年ことチョウジがのんびりと柔らか音色を奏でれば、その後に残りの二人も続く。チョウジが楽しそうに縦笛を奏でているのに対し、他二名ことナルトとシカマルは真剣そのものの表情で、まるで縦笛と格闘しているかのよう。
滑るように動くチョウジの指先とは対照的に、ナルトとシカマルの指の動きはどこかぎこちない。それは音にも反映されているようで、二人の奏でる音は所々で引きつけを起こしているかのように立ち止まったり一音多かったり。
そんなことは二人とも承知のようで、曲が進むに連れて眉間には深い皺が一つ二つと刻まれて行く。楽譜を確認しながら二人の表情をちらりと盗み見たチョウジは、やれやれと心の中で苦笑を零した。
柔らかな音色と引きつけ二重奏の不協和音が終局を迎えてピタリと止まる。それとほぼ同時に、盛大な溜息が広い教室中にこだました。まるで野外実習を一週間分もこなしたかのような二人の脱力ぶりに、チョウジは少し困ったような微笑みを浮かべながら「お疲れさま」と言葉をかけた。
「だぁぁ~!もう、なんでこんなにムズいんだよッッ!笛~~~!!!」
たまりかねたようにナルトが嘆けば、隣のシカマルも同意を示すように頷いた。
「ホントに、めんどくせー」
「でも、二人ともだいぶ上手くなってきたじゃない。段々と立ち止まらなくなってるし、ちゃんと曲になってきてるよ」
最初の頃を思えば、とチョウジがコソッと心の中だけで呟いた。
学年が一つ上がると同時に、一般教養として『音楽』の授業が加わった。いくら忍といえども、戦闘に関する知識や術の知識があったとしても、世間一般の『常識』を知らなければ苦労することもあるからだ。
しかし、本当に知識として身につける程度の授業なのでそれほど力が入れられているわけではない。他の科目のように頻繁にテストもない。それに、失敗した所で特に成績に反映することもなければ、落第の原因にだってなりはしない。どちらかと言えば、年々厳しくなる実技の授業の合間に子供たちの気分転換に組み込まれているような、その程度の科目だ。にも関わらず、ナルトとシカマルが『居残り』をしているのは、その『最低限』というボーダーラインにさえ引っかからなかったからだ。
二人のあまりの出来なさ加減に、流石のイルカも腹の底から溜息をつきながら居残りを命じたのであった。その時のやるせない表情と言ったらない。そんなイルカの表情を思い出して、チョウジはひっそりと気合いを入れなおした。せめて、もう少しだけでも上達してイルカ先生に聞かせてあげないと、と。
「えっと、ナルトはもうちょいリコーダーの穴をしっかり押さえて。じゃないと空気がもれて違う音が出ちゃうから。シカマルもね。あと、二人とも曲のリズムを気にした方がいいかな」
チョウジが気づいた所をスラスラとあげて行けば、二人ともげんなりとした表情になりながらも力なく頷いた。イルカに怒られ慣れている二人ではあったが、あんな困り果てた顔を見たのは始めてのことだった。普段はマイペースなシカマルも、ひたすら我が道を突っ走るナルトも、これは『ヤバい』と思ったようだ。居残りを言い渡された授業が終わると、すぐさまリコーダーの得意なチョウジの元に走り二人揃って『教えてくれ』と言うのだから相当ショックだったのだろう。
その証拠に普段は『居残り』を命じられても、居眠りするか、新たな悪戯を仕掛けるかの両者がくたびれながらも真面目に『練習』していた。そんな必死な二人の姿を見て、やっぱりイルカ先生って凄いなぁとチョウジは感心する。
三人がああでもない、こうでもないと必死に練習をしていると黒板側の扉がカラカラと開かれた。イルカが入ってきたのかと三人が入り口に視線を向ければ、そこには初老の良く見慣れた人物がひょこりと教室に入って来る所だった。
「なぁんだ、火影のじいちゃんかよ」
「なんだ、とは随分じゃなナルト」
初老の老人こと『三代目火影』がナルトの物言いに嘆いてみせれば、ナルトは悪びれもせずに「だって、イルカ先生だと思ったから」と言ってのけた。そんなナルトの言葉に苦笑を浮かべつつ、三代目はチョウジが座っている席の隣に「よっこいせ」と腰掛けた。
そんな三代目の様子を不思議そうに三人が眺めれば、三代目はのんびりと微笑みながら口を開いた。
「お前たち、こんな時間まで居残りとは勉強熱心だのう」
「んだよ、じいちゃん。嫌みを言いに来たのかよ」
ナルトが口を尖らせて抗議すれば、三代目は苦笑を浮かべつつも『違う、違う』と否定した。
「アカデミーを見回っていたらお前たちの演奏が聞こえてきたんでな。あんまりにも一生懸命な音色だったから、ついつい来てみたのじゃよ」
「ふーん。じいちゃんってば火影のくせに暇人なんだな」
口では悪態をつきつつも、どこか嬉しそうな表情のナルトに三代目は表情を緩めるとチョウジの方に視線を向けた。
「チョウジが二人に教えてあげとるのか?」
「えっと、はい。教えるなんて程でもないけど」
緊張した面持ちで返すチョウジに対し、三代目は「そんなことなはいぞ」と言葉をかけた。それに続くようにナルトとシカマルも口を開く。
「チョウジがいなかったら、オレらずっとこの笛と格闘してなきゃなんなかったてばよ」
「そうそう、なにせオレら二人じゃ、ちゃんと曲になってるのかさえ怪しかっただろうし」
オタマジャクシに取り殺されていたかもな~、とシカマルが零せばナルトも真面目に頷き返す。そんな二人の様子がおかしくて、三代目とチョウジは思わず笑ってしまった。シカマルとナルトもそれにつられたように笑いだす。
そんな楽しげな笑いが漏れ聞こえる扉の前で、イルカは柔らかく微笑む表情をなんとか引き締め、咳払いを一つする。そして、柔らかい夕日に満ちた教室の中へと入って行った。
いただいてしまいましたよ‥‥!
うちのイルカ誕トップの下の方を見て書いてくださったそうです!ヒィ
イルカさん的ハーレム‥‥まさにハーレムですこれ。
3代目と楽しそうに笑う生徒たちとか。ハーレムです。
チョウジ視点が大好きなんで、本当に本当にツボにはまりました‥‥。
クロ雨蛙様ありがとうございました!
3代目は絶対そういう習慣あると思います。放課後の教室見回ってると思います。絶対。
「夕暮れ教室1」でもシカマルとイルカ先生が話してますので
イル+シカ好きな方は必見です!
他にもアスシカ、ライシカなど素敵すぎるシカ受小説が沢山あるクロ雨蛙様のサイトへは
リンクから是非飛んでくださいね!