忍者ブログ
NARUTOのイルカシカマルイワシライドウあたりメインのブログサイト。
[39]  [40]  [41]  [42]  [43]  [44]  [45]  [46]  [47]  [48]  [49
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 

目を覚ましたときはもう日が昇っていて、アスマが朝食の準備をしてくれていた。
計算するとここ3日分の睡眠時間に匹敵するほどの間眠っていたことになる。
ベッドを占領していたことを謝ると、アスマはどうでもいいことのように、ああ、と頷いただけだった。シャワーを借りて、慌ただしく出勤の準備をした。昨日早退したのだから遅刻するわけにはいかない。
アカデミーまでの道をアスマと並んで歩いた。朝の太陽がまぶしくて、アスマはほとんど目をつぶっていた。
「ねえアスマ、人を好きになるってどんな感じですか」
途中で俺はそんなことを聞いていた。
「何だ、いきなり」
「紅先生とのことは知ってるんですよ。どんな感じなんですか」
俺がいたずらっぽく笑って言うと、アスマはぷいと顔を背けて、それでも答えてくれた。
「何もかもを犠牲にしてもかまわねえって思って‥‥相手を傷つけてもなお、抑えることができなくなる‥‥とか、そんな感じかね‥‥」
意外な言葉に、俺はしばらく黙ってアスマを見た。
俺が納得のいかなさそうな顔をしてるのに気付き、アスマは笑って
「ああ、それが恋だ。でも愛じゃない」
と言った。
 
アカデミーに出勤して受付に座るとほとんど同時にカカシさんが姿を見せた。
「イルカ先生!昨日はどこに行ってたんですか」
俺を見るなりそうまくし立て、あ、と我に返って「いや、その、昨日はごめんなさい」と謝った。
「どこって、アスマ先生の家にいましたけど」
謝罪には答えずに俺は平然と言った。
「え!でもアスマの家には‥‥」
後から知ったことだが、アスマは家に結界を張ってカカシさんをやり過ごしていたらしい。カカシさんには、電気が消えて中に誰もいないように見えていたとか。写輪眼を使えばすぐにわかったことだが、まさかそんなことのために左眼を使ったりしないだろう。
「ま‥‥無事で良かったです。誰かに誘拐でもされたかと思ってました。それか、俺に怒ってどっか旅に出たとか」
この人は俺のことをどんな人間だと思ってるんだろう。ふと、疑問に思った。そういえばそんなの聞いたことがなかったな。
ゲンマさんは俺のために忍びをやめてもいいと言った。そして男を愛しても子どもを持てるという逃げ道をくれた。カカシさんは‥‥どうなのだろう。
初めてカカシさんの言葉を聞いてみたいと思った。そして、自分の本音も伝えたいと。
伝えたら今の関係は壊れてしまうだろうとわかっていても。
「カカシさん」
「はいっ!?」
黙っていた俺が急に名を呼んだので、カカシさんはびくっと身体を震わせて、裏返った声で返事をした。俺は吹き出しそうになったのを堪えて、言った。
「今日、お時間ありますか」
「へっ‥‥え、ええ。もちろん!イルカ先生のためならSランク任務だってすっぽかしますよ」
「それはやめて下さい」
冷たく言うとカカシさんはしゅんとしたが、次の俺の言葉でたちまち元気になった。
「俺、今日は18時上がりなんですけど、飯行きませんか」
その代わり、周りの視線はいっそう痛くなった。
 
 
 
 
まさかイルカ先生の方から食事に誘ってくれるなんて。これはもう告白‥‥いや、プロポーズと受け取ってもいいだろう!
昨日はあれからイルカ先生の家に行って、いなくて、探して、でもどこにもいなくて、結局一晩中イルカ先生を探して歩いていた。徹夜だった。アスマの野郎、次会ったら埋めてやる。
今日は1日フリーだ。一旦家に帰って眠って、いざというときのために体中ぴかぴかに磨いて出陣しよう。
まあでも初めてイルカ先生に誘われたってことで興奮してた俺は、もちろんベッドで大人しく眠ってるわけにもいかず。イチャパラで色々と妄想を繰り広げていた。
約束の時間30分前にアカデミーに着き、入り口からちらりと受付を覗く。イルカ先生はやはり気配で気付いたのか、それとも忙しくて気付いていないのか、俺の方には目も向けなかった。周りの職員は何人か気付いたみたいだ。
ふと俺はイルカ先生の前にいる男を見た。はっはっは、と暑苦しく笑うあいつは‥‥
「青春だな!イルカ、教えてやろう。恋は甘酸っぱい。愛は甘い。違いはそこだ!」
恋?愛?ガイ、てめえはイルカ先生と何て話をしてるんだ。
じゃあな、とガイはイルカ先生の頭をぽんぽんと叩いて、出口に向かって歩きだした。つまり、俺の方に来た。
「おお、永遠のライバルカカシ!ここで会ったが100年目、勝負だ!」
めんどくさいのに見つかった‥‥俺は溜息をついた。でもそのおかげでイルカ先生が俺を見たから、まあよしとする。
「今回は俺が勝負の内容を決める番だったな‥‥では、スクワット500回どちらが先に終わるか勝負だ!」
「じゃあ俺の不戦敗で」
「何!逃げるか!」
「いや、俺これから用事あるから」
そう言ってイルカ先生の方を見ると、周りの職員が慌てて口をひらいた。
「イルカ!後はもう俺たちに任せて、お前は先に帰れ」
「はっ?」
「ほら、まだ本調子じゃないんだろ?いいからもう行け」
事なかれ主義というのは話がわかる。イルカ先生は困ったような顔をしていたが、やがて荷物をまとめ始めた。
「じゃ、お先に」
「おう!」
「頑張れよ!」
余計なことを言った職員がイルカ先生に睨みつけられている。え!頑張れって。俺との仲をってことか!やっぱりアレはプロポーズだったのか!
「お待たせしました、カカシさん」
「いえ!全然!」
「何だ、イルカと約束があったのか。なら勝負は無効だ。気高き猛獣はクールに去ろう」
そう言ってガイは風のように去っていった。あいつも気が利くようになったじゃないか。
「じゃ、どこ行きましょうか」
浮き足立つのを堪えて、俺は紳士を装った。
でもイルカ先生の前では、やっぱり俺もただの獣に成り下がってしまう。
「あの‥‥良ければですけど、うちに来ませんか」
俺たち、結婚します‥‥!
 
途中でスーパーに寄ったりして新婚気分を味わいながら、俺たちはイルカ先生の家への道を歩いた。イルカ先生の姿が消えていくのをじっと立って見ているだけだった道も、その先へと行ける。
会話はやっぱり少なかったけど、俺は全然気にならなかった。終始笑顔でいた。イルカ先生の方は‥‥笑顔はほとんど見せなかったから、照れてるんだと思っていた。
家について、ドアを開ける――あのとき、イルカ先生を抱きしめたときの感動が蘇ってきて、耳が熱くなってくるのが分かる。イルカ先生も同じことを思い出したのか、少し頬が赤い。気持ちが通じ合った気がする。
それから食事が終わるまでのことは実際のところよく覚えてない。ずっと気持ちがふわふわしていたから。イルカ先生がご飯作ってくれて、俺はお茶飲みながらそれを待ってた。手伝おうとしたのにいいから座ってろと一蹴された。イルカ先生の料理の仕方は、さすが忍びというか、俺自身はほとんど料理ができないので忍びの料理は大抵こんなものなのかも知れないのだが‥‥物凄く速かった。包丁さばきとか。カカッと音がしたかと思ったら次の瞬間には具材が切れている。芸術的と言ってもいいくらいのそれを、俺はポカンと口を開けて見ていた。
そんなだから料理にかかった時間は短かった。イルカ先生は俺の食の好みを覚えていてくれて、スーパーでは真剣にナスを選んでいた。
ナスのみそ汁とか野菜炒めとか食べた。おいしかった、はず。イルカ先生の手料理とか感激過ぎて味わかんなかった。でも絶対おいしかった。俺、食べ方汚くなかったかな。こぼしたりしてなかったかな。そんなことが後から気になった。
 
食べ終わって、俺たちはちゃぶ台を挟んで向かい合って座っていた。
イルカ先生が俺を見てる。じっと見つめてる。え、顔に何かついてるのか。それとも――イルカ先生は、俺の瞳を見てる。
「あの、イルカ先生?」
「何ですか」
俺の目をじっと見たままでイルカ先生は言った。
「もしかして俺のこと好きになってくれました?」
理想はイルカ先生から言ってくれることだが、聞かないと聞けないんじゃないかと不安になったのだ。
俺がそう言うと、イルカ先生はやっと目を逸らした。でも照れるとかそういうそぶりじゃなかった。
「よくわからなくなりました‥‥」
ぽつりと言った。
「何がですか」
「俺は‥‥俺は、忍びを好きになるのが怖い」
急に聞こえたイルカ先生の本音に、俺は目を見開いてその場に固まってしまった。
黙っていると、イルカ先生は耐えきれなくなったように次々と言葉をあふれさせた。
「ゲンマさんが、独身の男でも養子をもらえる場合があると教えてくれました。だから俺は、俺が好きになる人は子どもを生めなくてもいいんだ、って思って。でも、それでもやっぱり忍びを好きになりたくなくて。どうしようもなく愛した人が、戦場で殉死なんて俺には耐えられません。そんなのはもう嫌です‥‥もう独りになるのは嫌です」
イルカ先生の声は震えていた。涙を必死で堪えているのがわかる。泣かれたら、俺はどうしていいのかわからなくなる‥‥だから泣かれる前に、俺はイルカ先生の側に行ってそっと手を取った。イルカ先生は身を引いたりはせず、そのままで話を続けた。
「両親が死んだとき、3代目が亡くなったとき、俺は絶対忍びを愛さないと決めました。なのに‥‥アナタに優しくされると決意が揺らぎそうになる。アナタに優しく抱きしめられたら、俺は‥‥。ゲンマさんは忍びをやめてもいいなんて言ってたけど、アナタはそうはいかない。アナタのことだけは、愛すわけにはいかないんです」
目を見てはっきりと告げられていたら、再起不能なまでに打ちのめされていたかもしれない台詞。
でもイルカ先生は顔を背け、消えそうな声で言った。俺の手を振り払ったりもしなかった。ずっと身体を震わせていた。
「イルカ先生」
手を握ったまま、もう片方の手でイルカ先生の身体を抱きしめた。額をイルカ先生のこめかみあたりに寄せて、きちんと聞こえるように唇を耳元へ持っていった。
「俺は確かに忍びをやめられません。里が許さないだろうし、許されてもやめる気はない。写輪眼と共に木の葉の里を守っていくと、この眼をくれた親友に誓ったから。でも‥‥俺は死にません。少なくともイルカ先生が俺を愛してくれてる間は。イルカ先生が俺に死んで欲しくないと思ってくれてる間は、絶対に死にません。約束します。絶対アナタを独りになんてしない」
そうしてほとんど唇が耳に触れるほど近づけて、愛してる、と伝えた。
今ならその本当の意味が伝わると思った。
 
最初は好きだなんて認めたくなかったのに。
気付けば、この人の笑顔を見るためなら何でもしたくて、きらきら光った宝物みたいに大切なもので。
好きだという意味をはき違えて、思うままに近づきたがった。触りたくて抱きしめたくて、そのたびに冷たい視線を返されて酷い言葉もかけられて、それでも、まだ好きで――この気持ちは、ただの恋情だと思うにはあまりにも切なかった。
いつからだろう。
毎朝のように立つ慰霊碑の前で、後悔と償い以外のものを祈るようになった。
そこにこの人の両親も眠っていると知って、そのふたりが生まれて、出会って、愛し合ってくれたことに多大な感謝の気持ちを示すようになった。
いつからだろう。
恋じゃなくてもっと大きな、愛という感情をこの人に感じるようになった。
そうしたら、愛だけでも人を幸せにできるという思いは確信に変わった。
幸せにしてみせる。
笑って手をつないでいて欲しいから。
 
 
 
 
恋と愛の違いなんて、所詮はただの言葉遊びに過ぎない。
でも、やっぱり自分の気持ちに少しでも合った言葉を使いたくて、考え込んでしまう。
俺のカカシさんに対する気持ちは、恋なんて呼べる代物じゃあなくて、もちろん愛でもなくて、ただ寂しいときに側にいて抱きしめて欲しいなんていう、勝手なものだ。
俺が泣いたらカカシさんは優しく抱きしめてくれる。頭を撫でてくれる。
ゲンマさんは多分、俺を泣かせないために影で支えてくれるのだろう。俺の幸せ像を打ち破って、選択の幅を広めてくれた人。俺のためなら忍びをやめてもいいとまで言ってくれた。
アスマは‥‥俺が泣いてるのにアスマはきっと気付いていた。気付いていても抱きしめてはくれなかった。きっと俺たちはそれで良かったのだろう。でも、と俺は思わずにいられない。あのとき、俺にもっと勇気があったら、俺たちはどうなっていたんだろう?
 
俺はまだまだ弱くて自分勝手で最低で。
それでも俺のことを好きだと言ってくれる人がいるなら、甘えてみてもいいのかななんて思う。
最初は身勝手な感情でも、いつかは愛と呼べるものになるのだろうか。全てを捨てても止めることができないような、そんな気持ちになるのだろうか。
 
 
俺、誰かを愛してみようと思う。
その誰かは、もしかしたらカカシさんかも知れないしゲンマさんかも知れないし、他の人かも知れない。
誰が相手でも、愛することは儚くて切なくて、それだけで幸せなんだ。
 
 
 
 
 
(了)
 
読んでくださってありがとうございました。
あとがき(駄文もいいとこなので読む方だけ反転でどうぞ)
 
あとがきなんて書かなくても伝えたいことを伝えられたらいいですよね‥‥。
とりあえずここまでで終わります。カカイルのつもりが総受気味になりました。
個人的にはお互い似たようなこと思ってるくせにお互い勇気のないアスイルが気に入ってます。
この後イルカさんの家でふたりがどうなったのかはご自由に妄想下さい。カカシさんは耳元で囁くだけで終わるような野郎なのでしょうか。
 
萌え以外にも何か伝えたいテーマみたいなものを散りばめてみました。
例えば「人を好きになると自己嫌悪に陥るよね」とか。
4人とも自分って最低だなあと1度は思ってるんですが、反応は変えたつもりです。カカシさんなんかはすぐ忘れましたね。
あとゲンマさんのように「1度に多くの人を愛してしまう」という性は、同性愛ほどメジャーじゃないけどいるんですよね。別にひとりだけを愛す必要はないと思う‥‥ゲンマさんはそうなったっぽいですが、裏設定としてはまだ他にふたり恋人がいます。そんなに頻繁に会わなくていい相手という感じで。
 
ちょっと色々詰め込みすぎて他の作品へのネタが尽きそうです。
台詞は引用しすぎました、反省しています‥‥ごめんなさい。
タイトルと中身があんまり伴ってませんね。ほんとごめんなさい。
こんなクソ長い文に付き合って下さって本当にありがとうございました!
感想やリク等ありましたら遠慮なく送って下さいね。
PR
この記事にコメントする
color
name
subject
mail
url
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア
最新コメント
[08/18 いちかわ太助]
[08/17 安田かずよし]
[08/05 いちかわ]
[08/05 かずよし]
[03/31 いちかわ]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
いちかわ
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
最古記事
アクセス解析
忍者ブログ [PR]

photo byAnghel. 
◎ Template by hanamaru.