NARUTOのイルカシカマルイワシライドウあたりメインのブログサイト。
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※長い割にアレなので暇なとき推奨です。
すっ飛ばしても話はつながるはずです。続きはこちら。
すっ飛ばしても話はつながるはずです。続きはこちら。
アンコやアオバと居酒屋を出たときのイルカは、その時は少なくとも意味を理解していなかった。
俺が解除に奮闘していたトラップが誰に対してのものなのか、何故あのくのいちが俺の顔を見て逃げ出したのか。
知られないままでいいと思っていた。
いや、知られたくないと思っていた。
知られませんようにと祈ってすらいた。
次の日、イルカは昼休憩の時間に俺のとこに来た。
向こうから俺を捜して来てくれるなんて、と感動しなくもなかったが、表情が複雑だったのでちょっと不安になった。
「最近俺への嫌がらせがなくなったの、ゲンマさんのおかげだったんですね」
ふたりきりになれる場所を選んで、隣に座ったイルカが話し始めたのはそんなことだった。
あーあ、ばれちまったのかよ。
祈りなんてやっぱり俺には似合わないのかね。
「ライドウか‥‥」
俺がカマをかけるとイルカは面白いほど反応して、
「い、いえ、ライドウさんは関係ないです、昨日の話で気付いて」
明らかに嘘だ。イルカの嘘はわかりやすい。元々正直が忍びになったような奴だ。俺はイルカのそんなところも好きだった。
「まったく‥‥こういうのは知られずにやるからかっこいいんだろうが」
照れ隠しに後ろ頭を掻くと、イルカはすいませんと謝った。謝ることじゃないんだけど。
「つーかお前な、少しは反撃したらどうだ。あんな好き勝手言われてやられて、何で大人しくしてんだよ。せめて誰かに相談するとかよ」
第3者の俺が苛々やきもきしてバカみたいじゃねえか。
「はあ‥‥まあ、最近身体がなまってたもんで、修行になるかなとか‥‥」
「修行‥‥って」
俺は呆れてイルカを見た。修行だと。俺ならあんな悪意の塊みたいなのごめんだ。里でまで危険度Aに晒されたくない。
「それにすぐに飽きると思ったんです」
「女がか?それともカカシがお前をってことか」
「‥‥どっちもです」
こいつは。こんなに楽観主義者だったか。
俺が溜息をついたのを、イルカは不安げに見て、黙った。
ああ。それでもどんどんイルカに惹かれているし、どんな言葉だろうがイルカの口から発せられるなら愛しいと思わずにいられない。
「ほんっとイルカは‥‥俺はイルカが好きだなあ」
俺の心を知らないイルカは唐突な台詞に目を丸くした。そしてすぐに、カカシに見せるような嫌そうな顔になる。
「おい、疑ってんのか、俺の気持ち。好きだって言ってんだろう」
そう言ってイルカの右手を握った。イルカはそれに反射的に身を引いたが、俺は離さなかった。
「一目惚れってやつだな」
「一目惚れ‥‥ですか?」
「いや、二目惚れぐらいだったかもしれないな」
そう言って俺は笑った。イルカはよくわからないといった顔をした。
どうしたら伝わるのか。俺自身この感情を上手く言葉にするのは難しい。言葉に出来る事象って言葉に出来ない事象よりずっと少ないんじゃないか、この世には。
とりあえず俺はストレートなものを口にしようと思った。
イルカが子ども達に優しく笑いかけたのを初めて見たときの気持ちをそのまま。
そうしたら、今まで誰にも告げたことのない言葉が出た。
「理想のヒトに出会ったと思った」
「‥‥‥‥は」
イルカは気の抜けた声を出した。
おい、こっちは大真面目に精一杯かっこつけて言ったのに何だよ。
「ちゃんと聞け。お前のも後で聞いてやるから」
その言葉で、イルカは素直に頷いて俺の言葉を待った。
「俺はお前のことを好きってことに関してはお前の親にも負けないと思ってる‥‥俺だって初めてお前を見たときからお前のこと好きだったんだから」
生まれる前から一緒にいられた家族と比較しちゃ明らかにこっちの分が悪いけど、俺はそんなことを言っていた。
「お前には笑っていて欲しい。お前の笑顔が好きだ。でも泣き顔も怒った顔も全部愛してやる。俺と一緒に生きてくれないか」
あれ、プロポーズだ、これは。告白と同時にプロポーズは重いんじゃないのか。まずはおつきあいしましょうくらいで良かったんじゃないか。でもそれが俺の本心だったから。生涯の伴侶をイルカに決めても後悔しないとすら俺は思っていたんだ。もちろんイルカも俺を選んでくれるなら後悔させないとも。
イルカはしばらくの間俺を見つめていた。俺も見つめ返した。イルカの真っ黒で吸い込まれそうな瞳に俺が映っているのが見えた。
「‥‥あ」
イルカは何かに気付いたように呟いた。
「ん?」
「そろそろ昼休み終わっちゃうんで‥‥」
「ああ」
時間というものを忘れていた。もう少し手のぬくもりを感じていたかったが、諦めてイルカの右手を離した。立ち上がったイルカに、俺は座ったままで言った。
「今日は何時上がりだ」
「20時ですけど」
「待っててもいいか」
イルカは真っ直ぐに俺を見つめて、それからちょっと笑って「はい」と言った。
20時5分前に受付に着いた。中には入らず、ドアの側でイルカを待っていた。
よく知らぬ中忍からの視線がいくつか突き刺さる。俺とカカシのイルカを巡る争いは尾ひれが付いて相当の噂になっているようだった。‥‥悪いことをしたな。やはりこの間の告白はまずかった、と俺は改めて反省した。
気配の感じからしてそう混んではいないようだ。時間通りに仕事を終われるだろう。
そう思っているとやはり5分足らずでイルカが出てきた。
「すみません、お待たせして」
「今来たばっかだよ」
待ち合わせの常套句を言って笑う。
飯は夜休憩の間に済ませたというので、俺はイルカを個室のある居酒屋へ連れて行った。個室と言ってもふたり用の小さなもので、店の雰囲気もそこまで格調高くない。あそこなら緊張もなくゆっくり話が出来ると思ったのだ。
今日の仕事内容のことなど世間話を少ししてから俺たちは本題に入った。
「じゃあ‥‥イルカの気持ちを聞かせてくれるか」
イルカは神妙な顔で頷き、話し始めた。
内容はこんなことだ。
気持ちはありがたく受け取る。ゲンマさんのことは好きだけどそういう好きではない。
自分は嫁さんと子どもが欲しい。何故ならあたたかい家庭に憧れているから。
そしてできたら嫁さんは忍びじゃない一般人がいい。親が両方とも忍びでは、もしものことがあったとき子どもがかわいそうだ。
子どもはふたり以上欲しい。自分がひとりっ子でさびしい思いをしたから。
なるほど、と黙って聞いてた俺は頷いた。大体が前情報の通りだ。
「お前がそう思う気持ちはよくわかる」
と俺は前置きして、
「とりあえず、俺はお前が望むなら忍びをやめてもいいと思ってる」
そう言うと、イルカは面食らったように慌てて言った。
「そ、そういうわけにはいかないでしょう」
「どうかな。俺ももう30だし。やめようと思えばいくらでも方法はある。これでひとつクリアだな。次、子どもは養子じゃ駄目か?」
「‥‥それは、かまいませんけど、独身じゃ養子はもらえません」
少し迷ってからイルカが答えた。
「おや、イルカ先生も勉強不足なんだな。引退した忍びが独身でも子どもを引き取った事例は過去にいくつかあるぜ。忍びじゃ結婚の機会が少ないってんで、特別の処置らしいけどな。3代目の頃の話だ」
もちろん俺はわざわざ調べたわけだが。用意していた俺の答えにイルカはまた目を丸くしていた。
「もしくは誰かに生んでもらうか‥‥俺は別に自分の血引いてなくてもいいから、お前が女に生ませた子をお前と育てるんでもかまわない」
「な‥‥!」
ああ、真面目なお前のことだ。そんなのは許せねえなんて反論するだろうことはわかってる。
「同意してくれる女を探せば問題ねえだろ。ビジネスとしても成り立ってる話だ。まあ、その気がねえならいいんだ。ていうかな‥‥俺はお前に嫁と子どもがいたっていいんだよ」
「え」
おそらく世の中の大半が理解しがたいようなことを、俺はイルカに話そうとしている。イルカがその大半に入ってることはわかっていながら、だ。
「俺はそいつらが与えてやれねえような幸せをお前に感じさせてやるまでだ。お前に俺だけを見ろなんて言わない。お前が俺に、お前だけを見て欲しいならそうする。俺はそれでいいんだ」
「‥‥何で」
やはりイルカはここ最近何度も見せた、よくわからないという顔をした。
でも俺にはなあ、その「わからない」という気持ちが、わからねえんだよ。
「お前のことが好きだからだ。‥‥そんなもんわかりきった答えだろう?」
お前を幸せにするためなら、手段なんか選んでいられないんだ。
俺の言葉を聞いたイルカはうつむいて、しばらく黙った。顔が上気していたのは酒のせいだけではないと俺は思った。‥‥いや、願った。
イルカの話を聞いていて思ったことがある。
あいつは忍びを愛してしまうのを極端に恐れているのではないかということだ。
両親を失って、家族のように思っていた3代目を失って、その上かわいがっているナルトにもいつ何が起こるか分からない、なんて状況。
忍びなんてやってりゃ常に生と死は隣合わせだ。自分がそうなる覚悟、知り合いがそうなる覚悟は絶対に必要なものだ。
それでも最愛の人を失うなんて、人生に何度も起きていいものではない。俺だって、怖い。
死の危険のないところにいる人間なら安心して思う存分愛していられる――戦場から帰ったとき、笑顔で「お帰りなさい」と出迎えてくれる人がいたら、俺たち忍びはどんなに救われるだろう。忍びが結婚相手に一般人を選びたがるというのは、決して少ない話ではないのだ。
それなら俺が忍びをやめれば。
実際にはそんなに簡単じゃない。俺はもう特別上忍の地位にいるんだから。
しかしそれは、正当に、気持ちよく、爽やかに引退しようと思ったら簡単じゃないというだけだ。手段さえ選ばなければ何のことはない。
それでイルカが納得しないとしても、やめてしまえばこっちのものだろう?
イルカが俺(及びカカシ)を好きになろうとしない最も大きな原因は、忍びであるという点だと思うんだ。
ただ単にあいつが異性愛者だからとか俺のことは根本的に好みでないのかもとかそんなのは、イルカの心の奥底に溜まってるかわいそうな呪縛に比べたらさしたる問題ではない。
最愛の両親を失った悲しみ、孤独、トラウマ。それがひとりの男を「父と母と子どもが仲良く笑う、あたたかい家庭」という典型的な幸せの図に縛り付けているのだ。イルカはその図だけが唯一の幸せだと盲目的に信じる。気持ちはわかるんだ‥‥絶対的に信じることができるものの存在には安心するよな。
でも、俺はそれを壊してやるよ。
そして、壊した責任はきっちり取ってやる。それが筋ってもんだろう。
同性を忍びを愛せるようになったお前の気持ちは、結局カカシに向くかもしれないけど、それもフェアってもんだ。
個室で俺はイルカに、もう人前で注目されるようなことは言わないししないと約束した。にもかかわらず、次の日にカカシとちょっとした言い争いをしたのは反省しなければならない‥‥あれはあいつが一方的に怒鳴っていて、俺は冷静でいたつもりなんだが、つい売り言葉に買い言葉、反応してしまったのが悪かったのだろう。
後で謝りに行った方がいいな、と思いながら俺はテラスを出た。
特別上忍専用というわけではないが、特上が比較的よく集まっていて上忍や中忍もそこそこ来るような部屋がある。俺はとりあえずそこへ向かった。見るとちょうどアオバと誰か知らない奴が出ていくところだ。
アオバは俺に、またおごってくれよーなんて言った。が、俺はお前がイルカ(動物の方)のストラップをポーチにこっそりつけてるのは知ってるんだよ。お前のことは空気の読めない天然ドジッ子だと思っていたが、もしかして‥‥。
部屋にはシズネと数人の特上、中忍が話すこともなく座っていた。ちょうどいい――俺はシズネに声を掛けて隣に座った。とりとめのない世間話の後、俺は突然切り出した。
「お前、子ども生む気はねえか」
シズネは最初ポカンとしていたが、すぐに顔を真っ赤にし、うろたえた。
「は‥‥!?な、な何、言って‥‥」
「俺のじゃなくイルカのなんだけど」
小声で続けると、シズネは顔色はそのまま、筋肉だけを強張らせた。
「お前となら能力も顔も問題ねえし、いい子が生まれそうなんだよな」
「ふざけんな!」
言うが早いか、俺は頬を平手打ちされていた。さすが5代目の付き人なだけある、見事なパワーとスピードだ。
「アンタ‥‥最っ低!!」
シズネは凝った台詞も思いつかずにそれだけ言って、部屋を猛然と出ていった。やれやれ、そんなに怒ることねえだろう。
シズネの俺に対する気持ちには気付いていた。そうしようと思えば俺の言うことを何でも聞くような女に仕上げることだってできる自信はある。少々めんどくさいが。
俺の交友関係、色恋沙汰についてはもうイルカも知っていることだろう。
世の中の大半が、イルカが、理解できない思想の正体はこれだ。
簡単に言うと「質より数」。昔からそうだった。
どんな人間にだっていいところはある。でもそれには限りもある。
数多くの人間と付き合えば、ひとりだけと付き合うよりもずっと多くの魅力に触れられる。ひとりでは満たされないものも補える。そうじゃないか?
数多くの人間と付き合えば、ひとりだけと付き合うよりもずっと多くの魅力に触れられる。ひとりでは満たされないものも補える。そうじゃないか?
浮気だとも思っちゃいなかった。今でもそうだ。俺に言わせれば、どうしてひとりしか好きになっちゃいけないのかわからない。自分がそういう考えだから、相手にも複数の想い人がいたってもちろんかまわない。
イルカはイルカで妻子を作ればいい。俺は別の魅力を感じさせてやる。
イルカが望んでくれるなら俺の方はイルカに専念することだって可能だ。
生まれて初めてひとりだけに執着するということを知った。ひとりだけを愛すなんてバカバカしいこと、俺には無理だと思っていたのにな。
まあ、そうはいっても、イルカがかまわないなら俺は今まで通りのスタイルを続けたいところだが。
それでもイルカさえ側にいてくれれば、恋人が50人いたって別れてみせると思った。
実際最近、身体だけの関係含めて5人と別れた。イルカの身辺のことを考えたらとてもじゃないが他の奴に回す気なんて残ってなかったから。
俺は自信家で、少しだけ自惚れが強くて、その辺は自覚してるんだ。
それなのにお前の屈託のない笑顔を見てたら、何だか。
お前にはむしろ妻子を作って欲しいなんて思う。
自分ひとりでお前を幸せにする自信が、もしかしたらないのかもしれない。‥‥なんて気持ちになったんだよ。この俺が。
お前の前ではどうも調子が狂う。いや、狂ってるのは調子だけじゃない、のかな。
でもさっきシズネに言われて思ったんだけど。
聞いてくれるか。
他の誰に最低と思われようと、俺自身が自分を最低と思おうと、お前の前でだけは最高の男になると誓うよ。
イルカ、
それじゃだめかな。
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