NARUTOのイルカシカマルイワシライドウあたりメインのブログサイト。
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もういい加減にして欲しい‥‥。
はー‥‥、と俺はこの数日で3桁はしているだろう深い深い溜息をついた。
俺は確かに、誰かを好きになってみようって思った。
前向きな気持ちでいた。カカシさんに対してもゲンマさんに対しても。
他の人を好きになっても、それはそれで幸せな気持ちになれると思ってた。
だけど‥‥こんなことになるとは。
事の発端は、カカシさんと一緒にいるところをアンコさんに見られたことによる。
カカシさんとは‥‥色々あって、今は割と仲良しというか。もう嫌いではないし、どっちかっていえば好きな方、かもしれない、かなあ?くらいだし‥‥ここだけの話だが1回だけキスのようなことをしたりしなかったり‥‥いやほんと軽い、ごくごく軽い、挨拶みたいなものだ。ほんとだ。別に恋人同士のするようなそーいうアレではないんだ。断じて。そんなこと言ったらゲンマさんとだって‥‥まあそれは置いておくとして。
アンコさんは俺達を見て、意外そうな声を上げた。
「あれえ、アンタたちって仲良かったんだあ?」
これには俺の方が意外だったんだが‥‥だってカカシさんが俺のことホニャララなのは里では周知も周知の事実だ。アンコさんはときどき情報が遅れてたりずれてたりするけどな。イビキさん曰く「空気の読めない子」らしいし。
アンコさんにじろじろ見られて、俺は曖昧に笑って誤魔化そうとした。俺達はふたりで飲んだ帰りだった。俺は割と酔ってたから、カカシさんがアンコさんに気付かれたとき瞬時にマスクをし直したことに気付かなかった。
「カカシ、アンタ今その怪しい覆面外してたわよね?」
あ、アンコさんってカカシさんにタメ口で呼び捨てなんだ‥‥さすが‥‥と思ったのを覚えてる。そういえば俺はアンコさんが敬語使ってるところは3代目とか火影様相手にしか見たことないな。
「何のことかさっぱり‥‥あれ、お前って家こっちだっけ」
カカシさんは明らかに動揺してる声を出した。誤魔化すの下手すぎだ。
俺が何とかしなきゃ、と思ったが考える間もなく、アンコさんは面白そうにニヤリと笑って、
「ふうーん‥‥なるほどね‥‥そういうことかあ」
と間延びした声を出した。
やばい、凄い楽しそう。いじりがいのあるおもちゃを見つけたサディストの目になってる。危険度Sだ。アラートアラートアラート。俺の頭で警報が鳴った。
俺はまた、何とかしなきゃ、と思ったんだが、酔った頭はうまく働かなく、いい考えが浮かばなかった。まあこの人相手に何かしようと思っても大抵は無理なんだけどな。
「イルカ、今度また飲みに行こうね。次はふたりで」
アンコさんはにっこり笑ってそう言うと、じゃあ、と去っていった。
あれ、何だ、特別変なことされなかったし言われなかった。この間の「25禁猥談」くらい激しいのを覚悟したのに。
しばらくポカンとして、ハッと正気に戻ってカカシさんの方を見たら、カカシさんは青い顔して呆然と立っていた。
「‥‥カカシさん?」
遠慮がちに声をかけると、カカシさんはびくんと震えて慌てて笑顔を取り繕い、いやあアンコも変わんないねえ、あ、イルカ先生、月が綺麗ですよ、などとまくし立てた。月なんか出てなかったのにおかしな人だとあのときは思ったんだが‥‥ん、もしかしてああいう意味か?今気付いた。俺は「私死んでもいい」とか答えるべきだったのか、冗談じゃない。大体人の言葉を使うとは何事だ。例えば俺があの言葉を翻訳するとしたらだな‥‥いや、そんなことはどうでもいい。
とにかくこれが発端となったらしい。俺にはよくわからなかったけど、後日ゲンマさんにそのことを話したら、ゲンマさんも青い顔になってた。そしてその理由を教えてくれた。
「アンコはなあ‥‥なんて言うか、横恋慕が多いんだよな」
「横‥‥」
「恋人がいる相手を落とすのが快感らしい。まあ本人は本気で惚れちまってるから、とやかく言えねえんだけど。落ちる方も落ちる方だしな」
そう言ってゲンマさんは手に持っていた千本をくるくる回した。ちなみにこの人が俺の前で千本を口にくわえないのは、カカシさんが俺の前でマスクをしないのと同じ理由だそうだ‥‥ううん。
「でも俺らは恋人じゃないですよ」
まあ友達というには少し親密なような、いや友達同士のスキンシップの範囲内だと思うけど、でもカカシさんは俺のこと好きだなんて言ってるし‥‥。
「ん、カカシがイルカに惚れてるってのがわかりゃいいんじゃねえの、あいつには。里1番の上忍が落とせないイルカを落とすなんて楽しそう、ってな」
「え。俺が狙われてるんですか?」
俺はまたポカンとした。確かに「今度ふたりで飲もう」とは言われたが‥‥どうせ狙うならその里1番の上忍を狙ったらいかがか。
「そりゃあアンコが狙うとしたらお前だろ。考えてみればあいつが今までお前を狙わなかったのが奇跡みたいなもんだよな‥‥」
ゲンマさんは溜息をついて、俺を気の毒そうに見た。な、何でそんな目で見るんだ‥‥!
「あいつってお前みたいなのが好みなんだよなあ。真面目っつうか優しいっつうか‥‥とにかくそういうの」
別に真面目でも優しくもないと思うけど、え、そうなのか。アンコさんってそうなのか。ええ、俺狙われてるのか。
狙うという言い方もアレだな‥‥えー‥‥ほんとにちゃんと好かれてるんならそれは凄く嬉しいぞ。最近女性にまともに声かけてもらったことないし。アンコさんは性格きついけどかわいいとこあるしなあ。い、いいかもなあ。
まんざらでもない顔してた俺に、ゲンマさんは真剣な目つきで口をひらいた。
「イルカ‥‥あいつとそういう関係になるのはあんまりおすすめしないぞ」
「え、な、何でですか」
「あいつはイビキ以上のサディストだ」
ゲンマさんはそこで言葉を切って、言いにくそうに目を逸らした。
「自称『愛のあるサド』らしいけどな‥‥とにかくマニアックなプレイを次々に試される。ドMにされちまうぞ」
プレイ!?
「それ‥‥情報源はどこですか」
「イワシとコテツとイズモ」
しっかりしろ中忍ズ‥‥てことはあいつらドMに‥‥うわあああ。
変なところを想像してしまった‥‥ええ、アンコさんと付き合ったら、俺もそんな、ああなったりするのか?えええ‥‥。
「あいつとは同僚とか友達でいるのが1番いい。絶対いい。落ちるなよ。まーカカシ相手にあれだけ拒否できてたんだ、大丈夫だと思うけどな」
言われて俺は現実に引き戻された。‥‥拒否、しきれなかったり、そもそも拒む気がなかったりもしたんだけど‥‥ん?俺はもしかしてカカシさんに落とされかけてるってことか?ヒィ。
「俺、俺は俺をすすめるぞ。恋人になるんなら」
「え」
ゲンマさんはそう言ってニヤと笑い、俺の頭を引き寄せて頬に軽く口づけた。‥‥慣れてきてる自分が少し怖い。
「俺といるときは取って欲しいなあ、それ」
「へっ」
「デコちゅーの方が好きだから」
俺の額当てをコンと小突いて、もう1度笑顔を見せてからゲンマさんは去っていった。
で‥‥その数日後、再びカカシさんと、受付所にて。
「あー‥‥聞いたんですか‥‥アンコのこと」
カカシさんは困ったような顔で、でも声は至ってのんびりしていた。
「ま、イルカ先生さえ気を確かにしてれば大丈夫ですよ。俺を相手にしてるときの毅然とした態度で接してればいいんです」
「そう言われても‥‥」
アンコさんだぞ。何故か上忍のカカシさんより逆らいがたい。あの人相手にバカとかうるせえとかは言えねえだろう。
「まさか俺よりアンコを選ぶなんてことはないですよね?」
カカシさんは急に心配そうな声を出した。何言い出すんだ。
「別に‥‥誰より誰をとかはないですけど」
「いっそきちんと俺のものになってくれたらなあ‥‥」
「バカなこと言わんでください」
「本気ですよ」
「だからバカだって言ってるんです」
俺は冷たく言ったが、カカシさんは何故か嬉しそうに微笑んだ。‥‥M、なのか、カカシさんも。カカシさんがアンコさんと付き合えば万事上手くいくんじゃないのかな、やっぱり。
「イルカ先生、俺来週から長期任務入るんですけど」
「ああ‥‥そういえば。でも長期って言っても10日くらいでしょう?」
「10日もイルカ先生に会えなかったら長期でしょうが!」
そんなとこで声を張られても。夜の受付に人は少ないが、少ないと言ってもいるんだから。少ないからこそはっきり聞かれるんだから。頼むから小声で喋ってくれ。
「その間に誰かに変なことされないか凄く心配で‥‥ゲンマとかゲンマとかゲンマとか‥‥」
「ゲンマさんは誰かさんと違って紳士だから大丈夫ですよ」
でもこの間された行為をカカシさんが知ったら怒り狂うんだろうな、と俺はちょっと心配になった。
いや、カカシさんが怒ることは別にいい‥‥いいのかな‥‥それよりカカシさんとゲンマさんが仲悪いのが怖いんだよな。俺のせいで仲悪い‥‥のか?俺は「やめて!俺のために争わないで!」とか言うべきなのか。いやいや、そういうのが嫌なんだよ!
「俺だって紳士ですよ‥‥イルカ先生と家にふたりでいても何もしなかったじゃないですか」
「‥‥‥‥」
「あ、いや、ちょっとはし‥‥」
「カカシさん!今日はもう帰って休まれた方がいいんじゃありませんか!」
俺は極めて平静を装っていたつもりだが、多分顔は赤く染まってた。ううん‥‥たかがあんな、あれだけのことを、思い出すだけでこんな恥ずかしいとはどういうことだ‥‥俺だってもう25歳なんだぞ。どこの生娘だ‥‥くそ。
カカシさんがまた嬉しそうににこにこしてるのにイライラしながら、お疲れさまでした、気を付けて帰ってくださいね、と棒読みで一方的に別れを告げた。するとカカシさんは慌てて、
「待ってくださいイルカ先生、その任務なんですけど」
「何ですか」
「出発前にイルカ先生の家行ってもいいですか?その‥‥イルカ先生の手料理がもう1回食べたいなーと」
「え」
手料理って言うほどたいそうなもんでもなかったし、あれは‥‥あのときの俺はよくわかんない思考回路で、ちょっと混乱してたっていうか、人恋しかったのだろうか。アスマとのことで感傷的になってて。多少自棄になってたところもあったし‥‥単純にバカだっただけかもしれないけど。
とにかく、自分のことを好きだと言う相手、それもいい歳した男、自分より数段腕の立つ上忍を、ひとり暮らしの家に呼ぶなんてどうかしてるだろ。あ、ほんとだ。ほんとにあのときの俺ってどうかしてたんだ‥‥よく食われずにすんだよな‥‥カカシさんって意外と優しいのかもしんない。
ごちゃごちゃ頭の中で考えている間に、カカシさんは必死に
「任務の前日に変なことしませんよ、何なら昼でもいいんですけど‥‥あ、食料は俺が買ってきますし、洗い物も俺がやるし‥‥」
と俺を説得にかかっていた。話半分に聞いて、
「あー‥‥考えておきます」
と返事すると、カカシさんはそれでも満足したのか、軽い足取りで帰っていった。
この時点では、俺はアンコさんに落とされないよう気を付けていればいい、はずだった。
アンコさん以上に厄介な相手などいるわけないと思っていた。
カカシさん→家に上がる。唇に1回。
ゲンマさん→頬に数回。
一緒にいる時間はゲンマさんの方が長いんだ。今のとこどっちの勝ちだろう。
きちんと最後まで続けられるか不安です‥‥特に何の考えもなく書いてます。
あと「月が綺麗」「私死んでもいい」の元ネタを知らない方は
「夏目漱石」「二葉亭四迷」「I love you」あたりでぐぐると良いと思います。好きなエピソード。
あと「月が綺麗」「私死んでもいい」の元ネタを知らない方は
「夏目漱石」「二葉亭四迷」「I love you」あたりでぐぐると良いと思います。好きなエピソード。
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