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NARUTOのイルカシカマルイワシライドウあたりメインのブログサイト。
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マジでシカマルがもじもじしているだけの文です。






















気付いたら見知った道に出ていて、またか、とうんざりした。
激務の合間を縫ってぶらりと散歩に行く。目的地なんて決めてねえし、ただ適当に気の赴くまま歩いていき、母ちゃんがうるさく言わねえうちに家に帰る。それが最近の俺の趣味というか、気晴らしというか、大して面白くはねえけど、時間を見つけてはそうするようになっていて、しかし不思議なことにそうやって目的もなく歩いているだけなのに、いつもいつもこうして同じ場所へ出る。
周りにはぽつりぽつりと住宅はあるものの、全体的に寂しさを漂わせるような道だ。とっくに日が落ちていることもあって寒々しい。角を曲がると、どこにでもあるような2階建てのアパートが現れる。
どこにでもあるような。薄汚れたベージュ色の壁だとか、塗装がところどころはがれたこげ茶色の屋根だとか、と書くといかにも安っぽい感じがするが、実際はそこまででもねえ、大抵アパートってこんなものだ。
でも俺にはそれが特別な建物だとすぐに見分けがついて、まあつまりそこは木の葉の忍びの独身寮として使われている。
寮といっても見た目も中身も普通のアパートだ。強いて言えばそこに住んでいるのは当然100%が独身の忍びであるということだけが他と異なる点で、それがどういうメリットを生むかというと、例えば任務明けの真夜中に帰宅して洗濯や掃除など始めても他から苦情がこねえだとか、暇な日は誰かの部屋へ集まって飲み会を開くだとか、そんなような、ただ単純に居心地がいいということらしい。
本当ならもっと条件の良いマンションなどへ移りたいが、そういう居心地の良さもあるし、きっかけがないまま今になってしまって、多分入居希望者が沢山いるから出てって欲しいだとか言われない限りはずっとここに住むだろうな、のようなことをライドウさんが言っていたのを、ここに来るたびに思い出しているのに、また思い出してまた胸や胃がぎゅんとなった。
俺はどうやらそのライドウさんに会いたくて無意識のうちにここへ向かっているらしく、無意識のうちに家まで来ちまうくらいだから相当会いたいのだろうが、それならもっと確実に会える場所というのが他にあるし、例えばライドウさんが普段よく待機している部署だとか情報部の部屋だとかだが、もっと私的に家なんかで会いてえにしても先にそういうところでアポイントメントなるものを取って来れば良い話で、自分自身何で唐突に散歩がてらここへ来るのかわからねえ。
そしてどうしてライドウさんに会いてえのかだが、ライドウさんというのは、下手すれば俺と父子ほども年が離れているし、ここ2ヶ月は挨拶程度に顔を合わせることはときどきあったがまともに会話してねえし、この部屋へだって2回しか入ったことがねえものの、おそらくは俺の交際相手と言って差し支えないはずだった。たぶん。
だって俺はライドウさんに、恋愛という意味で好きです、のようなことを言い、ライドウさんの方も、うん、わかった、と頷いて俺を抱きしめたりキスをしたりしたので、付き合っているということになるのだと俺が判断しても良いはずで、でももし「付き合いましょう」「そうしましょう」と交わさなければ付き合っていることにならねえんだとしたら俺らは付き合ってねえことになるし、それにライドウさんから、俺もシカマルが好きだ、のようなことは一切聞いていなく、もしかしたらやっぱりあのキスは親愛のキスであって恋愛だの恋人だののそういうアレではなかったのかもしれなかった。
そんなことをもやもやと悩んでいるのなら本人に直接聞いて確かめればいい、と思ったものの、俺自身が任務で忙しいのはまだしも、ライドウさんの方だって最近は厄介な任務を続けて受け持っていて、この間も2週間里を離れていたがそれはまだ短い方で、その前はまるまる1ヶ月近く火の国の各所を飛び回っていたと言うから、そんな忙しい相手にわざわざ時間を作ってもらった上で、俺らは付き合ってるんすか、なんて質問をするのは馬鹿げている。もし付き合っているのだとしたら、何を馬鹿なことを、と思われるだろうし、もし付き合ってねえんだとしても、何を馬鹿なことを、と思われるに決まっていて、どっちにしろ俺はライドウさんに馬鹿な子だと思われることになり、俺はライドウさんが好きだからそう思われるのは嫌なので直接聞くのはよくねえなという結論を出した。
それで、そんな風にぐだぐだと考えているが、じゃあ具体的にどうしたらいいのか、どうしてえんだ俺は、と思うと、ライドウさんの方から俺に会いに来てくれてひっそりとふたりきりになれるところへ行き、抱きしめたりキスしたりしながら、俺らは付き合ってるよな、と言ってくれればそれは最高なんだが、さすがにそんなことが現実に起きるとは思わねえし、せいぜい妄想にとどめておくとして、そもそも俺がライドウさんを好きなわけなので俺からアクションを起こさねばならず、偶然を装ってこの辺りで会えればいいかなあ、いや俺がこの辺りうろうろしてるのを偶然とは思われねえだろう、付き合ってねえんならストーカーというやつだ、と思って困ったので、さっきの付き合っているのかどうかということを考えたんだが、結局俺だけでは答えを出せねえ問題なので保留することにし、今はもうそろそろ母ちゃんがうるさく言う時間だから帰らねえといけねえと思ったので帰ることにした。
軽く溜息をついてからくるりと踵を返すと、すぐそこにアオバさんがぽつんと立っていて、驚いた俺は喉の奥でヒィと声を上げそうになったが失礼なので何とかこらえた。
「ああ、やっぱシカマルだったのか」
「こんばんは」
会釈と挨拶をしてすぐに立ち去ろうと思った。アオバさんの部屋はライドウさんの部屋のふたつ隣で、しょっちゅう出入りしては面倒を起こすのだとライドウさんが愚痴をこぼすのを何度も聞いていた。つまりはそれほど仲が良いということだし、アオバさんは思ったことを何でも言葉にしてしまうというか、言うべきでないことも平気で言うというか、とにかくそういう困ったところがあるので、俺がここにいたこともすぐにライドウさんに伝わるだろう。俺らが付き合ってねえんだとしたら俺はストーカーになっちまう。困った。
「ライドウに会いに来たのか?ちょうどいい、あいつ今さっきアンコに絡まれてつらそうにしてたから、呼んだらこれ幸いと走ってくるよ」
ちょっと待ってな、呼んでやるから、とアオバさんは言い、どこからともなくカラスを1羽呼び寄せたのだが、俺の方がちょっと待ってくださいと言いたかった。
何故かというとライドウさんと俺は周りから見たらほとんど接点がないことになっていて、まあうちの親父と母ちゃんとは昔からの付き合いらしく、ライドウさんとのことで何か聞かれたら俺はその方面で話を濁すようにしていて、それも何だか情けねえなあと嫌になるのだが、とにかく俺らが抱き合ったりキスしたりという関係だと知っている人はいねえはずだ。いくらアオバさんと仲が良いと言っても、ライドウさんがアオバさんに俺とのことを話すわけがねえし、アオバさんが普段のライドウさんと俺の関係を敏感に察知することもまずねえと思うし、もっとわかりやすい、同じ小隊になったことがあってときどき飯に連れていってくれるコテツさんやイズモさんもこの独身寮にいるのだから、そっちに会いに来たと考えるのが普通で、アオバさんが普通でないということには異論はねえんだけど、何だって俺の存在をすぐにライドウさんに結びつけたのか、変に普通でないことを言うアオバさんが何だか怖くなった。
「あの、俺別にライドウさんに会いに来たわけじゃ」
「大丈夫、呼んだらすぐ来るって」
会話が通じねえ。
「つっても何分かはかかるから部屋ん中で待ってな。こんなとこ突っ立ってたら寒いだろ」
俺の話を少しも聞いてくれねえアオバさんが優しくもそう言い、手招きしながらアパートの2階へと階段を上っていった。俺は仕方なく後をついて行き、だから違うんすけど、のようなことをごにょごにょ言ったがやっぱり聞いてはもらえなかった。
アオバさんはライドウさんの部屋の前まで来ると、似たような鍵がいくつもついているキーホルダーをポケットから取り出した。おそらくはこのアパートのそれぞれの部屋の合鍵だろう、よくもあれだけの似たような鍵の束の中から1つをすぐに見つけられるな、と感心してしまったが、俺もライドウさんの部屋の鍵だったら無数の鍵に埋もれてたって見分けがつくに違いないと考えて、ひとりでまたもやもやとした気分になった。
「はい、どうぞ」
アオバさんは手慣れた動作でライドウさんの部屋のドアを開けて俺を中に促したが、部屋の主が帰宅する前に俺が上がり込んでいていいものかどうか、だってこの部屋にまだ2回しか来たことねえし、と思って俺はぐずぐずした。
アオバさんがそこへとどまって俺を強引に中に追い立てるようなことをしなかったのは幸いだった。アオバさんは自分の部屋へ入り、玄関先でごそごそとしていたかと思うとすぐに出てきた。
「俺は忘れ物取りに来ただけだからさ。ライドウんちで待ってろよ、お前を寒空の下ひとりで待たせたとライドウに思われたら俺また酷い目に遭わされる」
「はあ」
「大丈夫、あいつ俺やゲンマが勝手に入って宴会開いてても怒らないから。あ、ストーブは点火のボタン押したらすぐつくぞ」
「あの」
「シカマルからも言ってやってくれよー、アオバさんがすげえ優しくしてくれた、とか何とか。そしたらこれから先の朝飯がもっと豪華になるかも‥‥あ、やべ、行かないと」
じゃあ頼むな、と勝手なことを言ってアオバさんは道の向こうへ駆けていった。
確かにアオバさんのおかげで俺はこれからライドウさんに会えるのかもしれず、感謝はすべきなのかもしれねえが、かといってこんな強引にコトが進むのは俺の本意ではなくて、ライドウさんに迷惑がかかるんだったら少なくとも責任の半分はアオバさんに負ってもらおう、と俺の方も勝手に考えた。
寒空、と言われてやっと気温が低いことを実感した。そりゃあ、だって俺が散歩に出たのは晩飯が終わってからのことで、良い子はもう就寝するべき時間だ。でもこれからここにライドウさんが来ると思うとそんな寒さだとかはどうでもいいし、でもこれからここに来るライドウさんの方はもしかしたら身体が冷え切っているのかもしれねえし、俺は大人しく部屋の中でストーブの点火ボタンを押して待っているべきなんだろうか。
そんなことをまたぐずぐずと考え始めたが、幸いなのかどうなのか、静かにこっちに走ってくる音が聞こえた。
 
 
 
 
 
 
(続)


切りどころが難しいんですが1記事に載せられる文字数オーバーしたので‥‥

どうでもいい補足
・アオバさんがシカマルはライドウさんに会いに来たんだと判断したのは、コテツとイズモからの情報による。コテツとイズモはこれまでのシカマルのライ訪を2回とも目撃しており、その2回をもってして「このふたりは仲が良いんだ」と決定、ライドウさんにその話をしたときも「ああ、ヨシノ先輩からもよろしくと頼まれているからな」と肯定されたのでそう思っており、アオバさんにも「そういやライドウさんとシカマルって仲良いんですよね、この間家まで遊びに来てたの見た」と話した。知ってるもんだと思って。そしたらアオバさんは「え、俺ライドウんち週6くらい行ってるけど見たことないよ」通いすぎだろ!まあライドウさんはアオバさんの来ないときしかシカマルを呼べないから。そしてライドウさんもシカマルとのことを聞かれたら両親と仲が良いからという方向で話を濁し、情けねえなあと思っています。
・ストーブが電源じゃなくて点火なあたりがライドウさんち。たぶん石油ストーブ。
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