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NARUTOのイルカシカマルイワシライドウあたりメインのブログサイト。
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振り向くと既にライドウさんが階段を上ってきているところで、目が合うと安心したように微笑んだので、俺も笑おうとしたけど駄目だった。
「何だ、来るってわかってたら‥‥アオバはどうしたんだ、あいつうちの鍵持ってるはずなのに」
「え、あ、いや、鍵は開けてってくれたんすけど」
中に入っていいのかどうか俺がぐずぐず遠慮しているところへライドウさんが来たんです、とは言えなかったが、ライドウさんは察知したようで、
「中で待ってれば良かったのに。アオバやゲンマなんて勝手に入って宴会開いてることがあるくらいで‥‥そこまでしろとは言わないけど、こんなとこで待ってたんじゃ寒かっただろう」
そう言いながら部屋のドアを広く開けて俺を中に促してくれたので、俺はようやく中へ入ることができた。
部屋の中も空気がぴりっとしていて寒い。やっぱりストーブをつけておけば良かった。
中の様子は前に来たときとほとんど変わりなく、きちんと整理整頓されていて、部屋はこの茶の間として使っているソファとこたつのあるところともうひとつ、寝室があるけど俺はそっちには入ったことがなく、でもたぶん綺麗にしてあるんだろうと予想がつく。ライドウさんは背が高いからベッドも大きいんだろうか、と思って、何だかよからぬことを想像しちまって恥ずかしくなった。
ライドウさんがストーブの点火ボタンを押すのをぼんやりと眺めた。寒いのに今日はあの黒いマントを羽織っていなかった。身体冷えてるだろうなとぼんやりと思い、でもきっと抱きついたらあったかいんだ、とまたぼんやりと考えた。自分から抱きついたことなんかねえし、抱きしめられたときもそんな体温をゆっくり感じてる余裕ねえのに、そんなことを思う。俺が今ライドウさんに抱きついたらライドウさんはどういう反応をするんだろうか。俺の身体も冷えてるけど、抱きつかれたらあったかいんだろうか。俺はライドウさんをあったかくすることができるんだろうか。
むりだ、と不意に思った。
何故かはわからねえけどそんな気がした。
「どうしたんだ」
ライドウさんがこっちを見ているのにやっと気付いた。俺はずっとぼんやりしていたらしい。
「え、‥‥ああ、その、用事っつうか、別に、大した用じゃないんすけど‥‥」
俺は必死にライドウさんに会いに来た口実を探した。この間の任務のことについて俺なりに考えたんですけど、やっぱりライドウさんと組むのはゲンマさんよりアオバさんの方が戦術的な意味で合っている気がする、なんて言ったところで、こんな時間にライドウさんの自宅を訪問した理由にはふさわしくないだろう。
ライドウさんは少しきょとんとした顔になってから、またちょっと微笑んで言った。
「用事はなくていいんだが、何て言うか‥‥疲れたような顔してるから」
温かい茶を入れてもらったものの、俺はどうにもライドウさんの顔を直視することができず、ずるずると茶に口を付けては、まあ、忙しいので、みてえなことだけ呟いた。できたら今は任務の話をしたくなかった。しかしだからといって俺が俺とライドウさんのこれからについて語りたいのですがなどと話題を振れるわけがなく、最近の任務についての話に当たり障りない返事をするだけだった。身体の中のどこかでよくわからねえもんがそわそわしている気がして落ち着かない。
会話が途切れた。何か言わねえと、と思って顔を上げて口を開こうとした。顔を上げた先のライドウさんが、おいで、とばかりにこっちに腕を広げていた。
じわ、と体内の熱全部が首筋から耳にかけて集まったように感じた。
開きかけた口を慌てて閉じ、急いでライドウさんの側へ行こうとした。がさすがに焦りすぎだろ、どんだけ飢えてんだ俺は、と思い、恥ずかしくなったので急ぐのはやめにし、努めてゆっくりライドウさんの側へ行った。
ライドウさんは小さい子にするみたいに俺の頭を撫でた後、また小さい子にするみたいに人差し指と中指の背で俺の頬を撫でた。嬉しくなくもない、という微妙な気持ちだ。俺もう14歳なんすけど、と不平を言いたくもなったが、
「いくら賢いったってまだ14歳だもんな、お前は」
とライドウさんが呟いたので、ライドウさんにとっては俺はもう14歳ではなくまだ14歳なんだとわかってたじろいだ。いやわかってはいた。ただ自分ではもう14歳のつもりなんだと言いたかった。それに俺は別に賢いとかじゃねえ、とも言いたかった。
確かに、周りの同い年の奴らよりは理解が早いような気はしていた。4歳のとき既に本を読むということをしていたと、ふりがながふってあって内容が難しくない本なら普通に読んでいたのだと、母ちゃんから聞かされたことがある。アカデミーを卒業するような歳の奴向けの本を、アカデミーに入学する頃に読み理解もできていたのは自分でも覚えている。
俺の知能というもんが平均より少し高いらしいとは自分で何となく気付いていた。でもそれもどうせ成人する頃には他と大差ねえようになっているはずだとも思った。
前にアスマがパズルだか何だか言って持ってきたものが俺の知能を測るテストなんだともうすうすわかった。それなりに取り組んでみせた。チョウジやいのが、俺の考える作戦がある程度良い結果を生み出すとわかっていてくれれば、俺はそれで良かった。下手に誇示するようなもんでもねえし、めんどくせえことになるのは嫌だったからそれくらいでちょうど良かった。アスマもこれから同じ班としてやっていくなら知っておいてもらっても悪いことにはなんねえだろうと思った。
テストの結果を知ったらしいアスマが、それ以来俺を見る目が変わったような気がして、俺は内心怖かった。平均より高い数字が出ればアスマもそれで満足するだろうと思ったのに、もしかしたら俺は俺が思っていたより高い数字を出してしまったのかもしれなかった。だとしたらそれはまぐれで、何故かというと俺の知能なんて俺が1番わかっているはずだからで、だって本人が言うんだからそれは間違いねえだろう。まぐれで変に高い数字が出てしまったのにそれが正しい数字だと思い込んでいるアスマが、俺のことを信用しすぎているんじゃねえかと思うとそれが怖かった。
俺はそんなにすげえ奴じゃねえのに。信じていいなんて言ってねえのに。俺はただ周りより少し精神的な年齢を重ねるスピードが早かったとか、そんな程度のことなのに。
アスマがそうやって勘違いした数字を上の人達に言ったのだとしたら、だから最近高ランクの任務ばかり行かされているということなのかも知れねえ。まさに俺が危惧していためんどくせえことというのはこれだった。今のところ幸運が重なってそこそここなしてはいるものの、今に限界が来て自分が駄目になってしまうんじゃねえかと思って俺は今現在も非常に怖い思いをしているのだった。
ぼんやりしていたら視界まで何だかぼやけてしまったように思い、俺はさり気なさを装って目をぬぐった。俺がぼんやりしていた時間なんてほんの何秒かで、考えていたことももちろん口になんか出してねえ。なのにライドウさんが俺を見ながらこんなことを言ったので、俺はまたさらに怖くなった。
「賢いというか、知能年齢、精神年齢が高いんだろうな。実際の歳より。精神的に成長するのが早いってことになるのか‥‥ときどきお前のこと20代前半くらいに感じたりするし」
20代前半ってコテツさんやイズモさんとふたつみっつしか変わらねえってことで、そう思うと俺の精神年齢がそのくらいというのは有り得るような気もするが、あのふたりの精神年齢が肉体と同じ26歳と言っていいのかは疑問だし、というかそれも俺はあのふたりが真剣に任務についている姿をまだ見たことがねえからというだけなのかも知れず、実際はあんなにバカ、いや、子どもではねえのかも知れず、それだったらやっぱり俺の精神年齢が20代前半って言うのはちょっと言い過ぎの様な気がした。俺はまだ思春期を抜け切れてねえとも思うし。
それより俺が怖くなったのは別のことで、今俺がまさに考えていたことをライドウさんも口にしたということが怖かったのであって、ライドウさんはひょっとして俺の心の中が読めるんだろうか。だとしたらこれは大変なことだ。だって俺はライドウさんに関するさまざまな馬鹿げた妄想をしでかしていたから、その一部でも知られたら忽ち嫌われてしまうに違いねえという自信があった。例えばあんなことやこんなことだ。大体わかるだろう。俺はライドウさんが好きだから嫌われるのは困るのだが好きだから妄想を止めるのもまた難しいわけで、こうなると八方ふさがりだ。まあ、ライドウさんが人の心の中を読めるとしたらだけど。本当に読めるのなら既に俺は嫌われているはずなのに、未だライドウさんが俺の頭や頬を撫でたりしている事実から、どうやら本当に俺の心の中を読んでああ言ったわけではねえらしいことがわかり、ひとまずほっとした。
ライドウさんはしばらく黙って俺の頭なり頬なり撫でていた。俺が何か言うのを待っていたのかも知れなかった。やがて撫でるのを止めてじっと俺の目を見始めたので、もっと触れられていたかったと思ってる気持ちが読まれるような気がして俺は焦り、視線を斜め下に逸らした。具体的な心の声は聞こえるはずがねえものの、そういう単純な気持ちはライドウさんに読まれてしまうような気がしていた。実際、そういうことはしばしばあった。
そんなことを思っている俺を、ライドウさんは抱き寄せてぎゅう、ぎゅうう、と抱きしめてくれた。ほら、やっぱり、と俺は思った。俺が何も口に出して言わなくても、ライドウさんは俺がしたい、して欲しいと思っていることを察してそうさせてくれる、そうしてくれる。ただ、会いたい、と、好かれたい、好きだと言って欲しい、その辺りだけはきちんと言わねえと通じねえらしかった。
ぎゅううう、とされてる間、俺は顎をライドウさんの方に乗せ、目を閉じて身体の力をほとんど抜いていた。ライドウさんに寄りかかってるので重いかもしれねえ、と心配になったがちょっとの間だけこうさせていて欲しかった。撫でられて、抱きしめられて、ようやく張りつめていた神経がゆるんだ。もともとゆるみっぱなしでいるのが俺の性に合っているのに、このところの任務のせいで長いことそうもいかなかった。ライドウさんに会ってこうされている間だけ安心してゆるめることができていた。ということは、俺がライドウさんに会いたかったのはそういう理由なんだろうか?
急に、目から熱いしずくのようなものがぽたと落ちたような気がして、びっくりして目を瞬かせたら、さらにぽた、ぽたともう2滴落ちた。
何故そんなものが俺の目からこぼれたのかわからず、頬を伝うものを手でぬぐってよく見ようとしたが、視界がぐずぐずになって見えなかった。手が濡れたのは感触でわかった。
何だ。何でだ。
「シカマル?」
ライドウさんが俺の名前を呼んだので、俺はライドウさんの方を見るべきだと思うが、目からしずくが垂れているということは俺は泣いているということで、泣いている顔をライドウさんに見られるのはちょっと嫌だ。俺はライドウさんが好きなのでかっこ悪いところを見られるのは恥ずかしいと思った。
ぎゅうと抱きしめたままでライドウさんはまた俺の頭を撫で始めた。ライドウさんの方を向く必要がなくなったのを感じて俺は安心してまた目を閉じた。閉じてるのに何やらあふれるのは止められないらしい。
つる、つる、と頬を伝っていく。このままだとライドウさんの服を濡らしてしまう。何だかいやらしい言い方だが涙で濡らしてしまうんだから色気も何もねえ話だ。俺はライドウさんの右肩に顎を乗せていたのをやめて額をライドウさんの右胸にこすりつけるようにして顔をうずめた。ライドウさんは何も言わずただ俺を抱きしめて頭や背中を撫でてくれていた。
黙ったまま抱きしめてもらったり抱き合ったり、今までもしてくれたことだ。でも泣くなんてことは初めてで、好きな人と会っているのに泣くなんてのは一体どういうことなのだろうかと不思議に思った。好きな人と会っているなら幸せなはずだ。現にこうしていて幸せではある。でも幸せだからとか嬉しくて泣いているというのとは全く違う。身体のどこかよくわからねえとこがぎゅんぎゅんになって苦しかった。泣くほど苦しいらしいんだ。
俺がこんなことになっていることにライドウさんは気付いているはずだ。だから何も言わないで抱きしめて撫でてくれている。俺はそれに甘えてちょっとの間だけこうしていて欲しくて、こうしていてもらっている。だからできるだけ早く泣きやむべきだ。わかっているのに泣きやむ方法がわからなくなって俺は戸惑った。今にライドウさんが俺の存在をめんどくせえものと考えるんじゃねえかと思って怖かった。だって俺なら確実にめんどくせえ。ライドウさんが泣いていて俺にそうして欲しいと思うんだったら何時間でも抱きしめていられるしそんなの全然苦じゃねえだろうが、そんなことあるはずねえし。俺がこんなことになってるのは俺にとってすげえめんどくせえことだ。ライドウさんもそう思うだろう。そうじゃねえんだったら、今、ライドウさんはどう思っているんだろう。
俺は俺の欲望ばっかりで、ライドウさんの気持ちなんて何ひとつ知らねえ。こんなに年が離れていて、男同士で、ライドウさんにとっては昔の先輩の実子である俺が、色々したい、して欲しいと望むのは果てしないわがままのように思えて、俺はなんてめんどうなことにライドウさんを巻き込んじまったんだろうと何度も後悔したけど、やはり望まずにいられず、結局はこうしてそんな無茶なことをしてもらうべく時間を割いてもらっている。
もちろんライドウさんにとってそれは義務じゃねえ。嫌ならはっきり断ってもらって良いし、ライドウさんはそういうことははっきりするタイプだと思うから、じゃあよっぽど嫌なわけでもなく、多少は気に入ってもらえているんだろうか、などと思ったりして、でももし嫌でもはっきり言えない事情があるだけだとしたら、とも思わずにいられず、例えば俺はそうやって昔の先輩の実子であったり、後はライドウさんが尊敬してやまないあの人の息子の弟子という立場でもあったり、他にも俺が知らない何かがあったりでそういう関係から俺に強く反発できずにいるだけだとしたら。
そう思うと苦しいのに、そのくせ、知らねえどころか俺はライドウさんの本心を知りてえとも思っていなかった。だからライドウさんは自分の気持ちを俺に言わねえんだと思う。俺はライドウさんに本心を言って欲しいわけじゃねえ。好きだと言って欲しかった。今俺のことを好きでないなら、好きになってからでいい。むしろ嘘でも良かった。ライドウさんはそんな嘘はつかねえだろう。だからライドウさんは俺に好きだと言ってくれねえんだ。
こんなことを思ってるくせに俺はライドウさんのことが好きだと言う。なんて利己的で、なんて幼い恋なんだと思う。こんな俺が賢いわけがねえ。20歳も過ぎてこんなことを考える奴なんているわけがねえ。いるとしたら、俺の精神年齢が高いのではなくそいつの精神年齢が低いだけだ。
ふう、と短く、小さな溜息をついた。頭も身体の中もぐちゃぐちゃしていて苦しい。好きな人のことを、ライドウさんのことを考えている間は苦しくても幸せなのに、それが自己嫌悪になるとただ苦しくてどうしようもなくなる。余計なことは置いといてライドウさんのことだけ考えるということが何故できねえんだろう。
ようやく俺は顔を少しだけあげた。止めようとせず流すままにしていた涙がようやく収まりかけていた。目腫れてるしかっこ悪い。できればライドウさんに顔を見られたくねえけど、そうもいかねえだろうなあ、と思った。
ライドウさんは頭を撫でていた手を止め、後頭部から首根っこの方をゆっくりと撫で下ろした。何だかそわそわして俺はもうちょっとだけ顔を上げた。ライドウさんは俺をまたゆっくり撫でながら額に軽くキスをしてくれた。それで俺はさらにもうちょっとだけ顔を上げた。
親指の腹で目尻を拭われて気恥ずかしくなった。でも顔は上げたままでいた。ライドウさんは微かに口元をゆるめた。何故か眉尻は悲しいことがあったみてえに下がっていた。
「お前は家庭環境の割に甘え下手だな」
ライドウさんが呟き、さらに小声で、俺に対してだけかも知れないが、とつけ加えた。そして唇に軽くキスしてくれた後、もっとちゃんとしたキスもしてくれた。
前よりもずっとゆっくり、丁寧に吸われている感じがして、俺はまた何故だか泣きそうになったが、何とかこらえられねえかなと考えていると、ライドウさんが俺の下唇というか口の中というか、とにかくその辺りの境目でどっちと言っていいのかわからねえような場所を軽く舌でなぞったので、何で俺がこうされるのが好きだとばれているんだろう、とそっちに意識がいった。
ちゅう、と軽い音を立ててライドウさんの唇が離れた。音立てられるのに弱いのもきっとばれてるんだろう、と俺は思った。目を開けると視界がまたぼんやりとしていたのでまたさり気なく目を拭った。ライドウさんは俺がそうするのをじっと見て、眉尻を下げたままの顔で
「こういうの、嫌か」
と言った。
俺は驚いてライドウさんを見た。心配そうにこっちを見る目と視線が合う。
「え、あ‥‥え?」
何とも間の抜けた声が出て俺は慌てた。
「いや‥‥今みたいなキス、嫌だったかと思って」
真面目な声で、自信なさげにそんなことを言う。俺が涙目になった理由を誤解したらしかった。
「や、嫌なわけねえ‥‥っす」
おかしな敬語になり恥ずかしく思いながらも俺が返すと、ライドウさんはまだ不安そうに俺を見ていた。
何でそんな顔するんだ。俺がするならまだしも。
「‥‥やじゃねえって」
ライドウさんの右胸に額を寄せ、ベストをぎゅっと掴んでからもう1度言った。本当は抱きつきたかったのに俺にはこの程度が限界で、顔がどんな色になってるのか考えないようにしながら黙ってライドウさんにくっついていた。
「だったらいいけど。俺はお前がどう思ってるのか、どうして欲しいのかがいまいちよくわからない」
ライドウさんがそんなことを低い声でぼそぼそ言い、ごめんな、とも言った。
嘘だ、と思った。それが顔に出たのか、ライドウさんは苦笑しながらまた言った。
「だって教えてくれないだろ。自分からは何も言わないししないし、どうしたって聞いても、何でもないとか、別にとか、押し黙るだけで」
何でもない風に言っているけど、ライドウさんは俺にずっとそう思っていたのだと理解できた。確かに俺は今までに何度もそのフレーズを使った。何でもないです、とか、別に、とか。何かライドウさんに言いたいこと、聞きたいことがあると決まってそう言っていた。
「でも」
「ん」
「‥‥俺だって、ライドウさんが何考えてるのか、よくわかんねえ」
言っちまった、と俺は内心すげえ動揺しながら、ベストを掴む手に力を入れた。顔を上げず極めて小さい声で言ったので聞こえてなければいいのに、と思ったが、最初の「でも」は聞こえていたようだから、後半の言葉もしっかり聞こえているに違いねえ。それにいくら小声で言ってもライドウさんに俺の出した声が聞こえていなかったことは今まで1度も無かった。
何考えてるのかわかんねえ人、というのはときどきいて、例えば周りの奴だとシノなんかがそうだが、ライドウさんがそういうちょっと奇妙な人だと言いたいのではなく、ライドウさんがどんな気持ちでいるのか、どうしてえのかどうしたくねえのかがわからねえ、ということなんだが、やっぱり少し無遠慮な台詞だったような気がして後悔した。
これは俺のわがままなのに。ライドウさんに付き合わせてるだけなのに。
ところがライドウさんは、ふ、と笑みをもらした。顔を上げて見ると相変わらず苦笑に近い微笑だったが、俺の額を大きな手で撫で上げてうつむかせられないようにしながら、ライドウさんは言った。
「そりゃあ、俺にお前の気持ちがわからないのに、お前に俺の気持ちがわかったら、年上として結構なショックを受ける」
聞いて俺は、あ、ずるい、と思った。
俺の考えてることをかなりのところまで把握しないとライドウさんは自分の気持ちを言ってくれねえということか。俺が先に言わねえと駄目なのか。いや、言ったはずなんだけど。俺はライドウさんに好きですって言った。なのにライドウさんは、わかった、かなんか言っただけで何も教えてくれてねえ。ずるいじゃねえか。どこまで言わなきゃならねえんだよ。つうかライドウさんが何も教えてくれねえから俺だって言えねえのに。‥‥いや、でもやっぱり、これは俺のわがままだから、俺がもっとちゃんと伝えるべきなんだろうか。もっと素直に言えたらライドウさんは俺のこと好きになってくれるんだろうか。なら、頑張る‥‥いや、でも。
「それに、そもそも聞いてこないだろう、お前は」
ライドウさんの眉間にちょっとだけ皺が寄ったのを見て俺は顔を下げたくなったが、ライドウさんの手がまだ額に当ててあったのでできなかった。代わりに視線を逸らすと、ライドウさんはまた苦笑して、一呼吸置いた後で口を開いた。
「そんなに遠慮しなくていいのに、っていつも思う。いのやチョウジやアスマと話してるときみたいに自然体でいて欲しい。お前の笑ってる顔見たいのに俺とふたりでいるときはえらく思い詰めた顔してるからそれがちょっと不満だ。最近お前がついてる任務がかなり過酷だとはわかってるし、泣きたいなら泣いても全くかまわないんだが、それならもっとちゃんと甘えて欲しい。ただ抱きしめててやればいいのか、キスもしてもいいのか、もっと先までしていいのかわからない。あとたまにはシカマルから会いに来て欲しいし抱きついてきてくれたりもしたら嬉しいな。だから今日ここまで来てくれたのは嬉しかった。もう少しお前の考えてることがわかればもっと嬉しい。これで大体わかったか?」
ライドウさんは一気にそこまで言い、じっと俺の目を見て俺の反応を待った。
俺は、同い年の奴らより少しは理解力のある方だと思っていたが、今ライドウさんが言ったことがいちいち理解できなくて戸惑った。何、何言った、今。もっと先まで、とか言わなかったか。まずそこに反応するのはどうかと思うが、俺だって健全な男の子だから仕方ねえだろう。いやそれよりまず聞きてえことがあった。
「あ、の」
「ん」
「今までってライドウさんから会いに来てくれてたんすか」
今までどういう状況でふたりきりになったり顔を合わせたりしたのかを思い出しながら聞いた。全部偶然だと俺は思っていた。たまたまひとりで書類の訂正処理をしているとこにライドウさんが資料を探しに来たり、アスマに任務のことで聞くことがあったので喫煙室に行ったらライドウさんがいたり、そんなだったはずだ。
「そうじゃなきゃ普段の任務の内容が違う忍び同士がそんなに顔を合わせることはないと思うぞ。アオバやゲンマともよく会うか?」
ライドウさんは少し呆れたような声で、でもおもしろがってる風でもあった。
ふたりについてはライドウさんからよく話を聞くので知っている気になっていたが、実際挨拶すらほとんどしたことがねえことに気付いた。うわ、何でこんなことに気付かなかったんだ、俺。報告書出すときにときどきすれ違うのも、ライドウさんがタイミング測ってくれてたんだろうか。夜遅くに帰るときに会ったのも、いのを家まで送ってきたって言ってたけど俺に会いに来てくれてたのか。うわ。嘘だろ。
「最近はちょっと忙しかったし、アスマの近くにいればお前と会えるかと思ってたが周りから変な誤解されるしで止めざるを得なくなってな」
顔をしかめてそんなことをつけ加えるので、俺は嬉しい気持ちと信じられねえって気持ちが混ざったまんまでとりあえず吹きだした。変な誤解について詳しく聞きたかったがさすがに自粛した。
「あの、ライドウさん」
「ん?」
「その、な、何でそんな、俺に会いに来てくれてたんですか」
聞くとライドウさんはきょとんとした顔になった。
「会いたかったからだろ。シカマルだって今日ここに来たのは俺に会いたかったからじゃないのか」
「そりゃ‥‥俺はそうですけど」
けど。俺は会いたかったけど。
「ら、ライドウさんは、何で俺に会いたかったんですか」
何だか誘導尋問のようだ、と思いながらも、俺は聞いた。ずっと聞きたかったような、聞きたくなかったような質問だ。俺がライドウさんに会いたい理由と同じじゃねえのなら聞きたくなかった。でもそれ以外に誰かに会いてえと思う理由って何があるんだろう。誰かに会いてえってことはつまりそういうアレなんじゃねえのか。いや、俺はチョウジとも会いたくなるし、親父や母ちゃんとも長いこと会わなかったら会いたくなるに違いねえし、そういうのの可能性もあるからはっきりどういうアレなのか聞きてえんだ。‥‥や、でも、チョウジや親父や母ちゃんに対する会いてえと同じなら聞きたくねえ。どうしよう。
「シカマルは何で俺に会いたかったんだ」
ライドウさんはきょとんとした顔を困惑の表情に変えて俺に聞いた。
だから、俺はもう言ったじゃねえか。俺はライドウさんが好きだって。だから会いたかった。俺にばっかり何度も言わせるなんてずるい。俺のわがままなんだけど。けど。だって。
「お前が俺に会いたかった理由と俺がお前に会いたかった理由は同じなはずなんだが‥‥他に何がある?」
今度は俺がきょとんとする番だった。
やっぱりライドウさんは俺の心の中が読めるんじゃねえのか?いや、読めるならこんな質問はしねえはずで。でも読めねえにしてはさっきから俺の考えてることと似たようなことばっかり言う。‥‥ということは、ライドウさんは俺と似たようなことを考えているのだろうか。いや、そんなまさか。
「というか何でそんなこと聞くんだ。そこから伝わってなかったのか、俺の気持ちって」
ライドウさんがまた眉尻を下げて悲しそうな顔になったので俺は慌てた。
「や、でも、だって、言われなかったから‥‥いや、俺が言われねえとわかんねえから悪いんすけど‥‥」
俺が尻すぼみにごにょごにょ言うと、ライドウさんは明らかに呆れたように溜息をついた。うわ。やっぱり俺馬鹿な子と思われた、きっと。
「あのなあ。確かに俺は気持ちをはっきり言葉にするのは苦手な方だが‥‥好きでもないのにキスなんかしないだろう。俺はゲンマとは違うぞ」
ゲンマさんの話は置いておくとして。
「俺の歳ならそうですけど、その、大人ってもっと、何て言うか、あの」
「だいぶ昔のことだけど俺にも14歳だったときはある。その歳の奴にキスしたらどう受け取られるかはわかってるつもりだったが‥‥時代の違いか」
「い、いや、俺が馬鹿なだけで」
実際には馬鹿、より先の言葉はうやむやになった。ライドウさんがいきなり俺の口を自分ので塞いだせいで、つまりキスをされたということだが、いつもより何て言うか激しいし頭押さえつけられてるしで困った。興奮する。いやそうじゃなくて、ライドウさんが怒ってるんだと思って俺は焦った。舌が舌に触れて困ったので身を引こうとしたがもう片方の手で腰も押さえられていたので叶わなかった。困った。
ちゅる、と卑猥な音を立ててライドウさんの舌が俺の口の中から抜かれ、俺は困りつつも安心したのだが、唾液が糸を引いてるのがちらっと見えてすげえ照れた。ここまでされたことなんかなかったのに。さっきのライドウさんの「もっと先まで」発言がまだ気になっているところにそんなことされたら誰だって期待する。いや、期待じゃなく。違う。色々考えちまうだろということだ。俺だって多分健全な男の子なんだから。10手先を200通りなんてレベルじゃねえぞ。
「泊まってくか?」
「え」
い、いきなりすぎねえかな。俺今日会えると思ってなかったし何も準備してきてねえし。心も身体もだ。そういうところがやっぱ俺はガキなんだなと思うが最初はみんなこうだと思う。仕方ねえだろ。
「まだお前がいつも何考えてるのか聞いてない」
「う、や、でも」
「もうだいぶ遅い時間だが‥‥家の人には言って来たのか?」
「あ!!」
忘れていた。時計を見ると、前に帰宅が遅いと怒られた時間より軽く1時間は過ぎている。そろそろチョウジやいのの家に連絡が行く頃だろう。しまった。
「す、すいません。俺もう帰んねえと」
「‥‥‥‥」
相変わらず俺の腰はライドウさんの手によって固定されていた。ライドウさんはその手をゆるめるつもりはないらしく、さらに不機嫌そうな目で俺を見ている。困る。
「ちょっと散歩行ってくるって言って出てきただけなんで、母ちゃん心配してると思うし」
「連絡すればいいんだな」
「え」
どうやって、と俺が戸惑っている間にライドウさんは手慣れた様子で1匹の犬を口寄せした。見たことあるような無いような。秋田犬という種類のような気がする。
「シカクさんの家に伝言を頼む」
「いいよ」
「シカマルは預かった。無事返して欲しければ――」
「ら、ライドウさん」
「今夜はうちに泊まらせ明日の仕事も滞りなく送り出すので明日まで待ってください。連絡が遅くなって申し訳ない。そんな感じで」
「わかった」
愛くるしい外見の真っ白ふわふわのその忍犬はしっかりと頷くとドロンとたちまち姿を消した。
え、あれ。泊まることになったのか。えええ。
「これで良いんだろ」
「え‥‥っと、でも」
「俺が遠慮するからお前も遠慮する。それなら俺は遠慮せずしたいことをすることにする」
「し、したいことって」
「お前がしたくないってちゃんと言うならしないけど」
そう言ってライドウさんはにやりと笑い、
「風呂の準備してくる」
とやっと俺から手を離して立ち上がり、部屋から出て行った。
風呂って。えええ。着替え持ってきてねえし、何も準備してきてねえのに、俺。
それにしたくねえなんて嘘つけねえ。ということは今夜俺らは色々致すってことか。えええ。いや、さすがに早い。したくねえわけじゃねえけど、してえけど、してえけど、まだ早くねえか。駄目だ。無理だ俺。
俺がライドウさんの後を追おうとしたとき、ドロンという音が再びしてあの忍犬が帰ってきた。何やら風呂敷包みを抱えている。
「ヨシノせんぱいがシカマルにこれを」
見ると着替えとパジャマだった。パジャマとかいいから。せっかくのライドウさんの服借りるチャンスが‥‥あ、いや。
母ちゃん急に人んち泊まるって言ったら怒るくせに、ライドウさんちならいいのかよ。そんな信用あるのかライドウさんは。今夜色々しちまうかもしれねえのに。いいのか。いや、絶対良くはねえんだろうけど。
もやもや考えているとライドウさんが戻ってきた。俺が抱えた着替えなどを見て
「さすがヨシノ先輩だな」
と笑い、忍犬の耳の裏などをカリカリ掻いてやっている。忍犬は嬉しそうに尻尾を振り、ライドウさんの手を舐めたりなどしていて、ライドウさんは俺のなのに何であいつが手を舐めたりしてんだ、とそれを見た俺は思い、なんてことを思っちまったんだと慌ててその思いを振り払った。犬に嫉妬って。赤丸がヒナタの顔舐めたときにキバが激怒したのを見てバカだなと思った俺が。
「じゃあツメさんによろしくな」
そう言うとライドウさんは忍犬から手を離した。忍犬は尻尾を勢いよく振ったままライドウさんに別れの挨拶を告げてまたドロンと姿を消した。
ふたりきりに戻って、これからのことを考えて俺はどうにもライドウさんの顔を直視できなかった。抱えた着替えをぎゅっと握ってそわそわした。
「一緒に入るか?風呂」
「え!」
唐突にライドウさんがとんでもねえことを言い出した。さっきから、この人は。
「嫌か」
「や、嫌とかじゃなく」
「じゃあいいんだな」
「違、嫌じゃねえけど、その」
「一緒に入りたくない?」
「入りたくないわけじゃなく、だから、あの」
「だから、じゃあいいんだろ」
「だ、駄目だって」
「何が」
「お、俺は、まだ、そういうアレは」
「俺は一緒に入りたい」
「え」
「シカマルがそうじゃないなら別にいいけど」
そう言ってバスタオルをふたつ抱えると、ライドウさんは風呂場へ向かった。
「もっと遠慮した方がいいか、俺」
ドアを開ける前にライドウさんは振り向いて言った。
「‥‥や、しなくていいです」
「本当に?」
「‥‥ん」
「俺もシカマルには遠慮しないで欲しい」
ドアを開けて向こうへ行ってしまう前に、もう一言ライドウさんはつけ加えた。
「どうしても嫌だったらいいけど、来てくれたら俺は嬉しいから」
その声だけ残して、パタン、とドアは閉まった。風呂場のドアが開く音、閉まる音がした。
着替えをぎゅっと抱えたままで俺は立ちつくした。どうしろって言うんだ。いや風呂に来いってことだろうが、自分から抱きついたりキスしたりすらできねえのに、つか会いに来ることすら躊躇してた俺が、いきなり裸の付き合いなんてできるわけがねえ。14歳だぞ。ライドウさんが14歳のときは好きな相手と風呂入るの平気だったのかよ。‥‥想像したくねえけど。
俺は途方に暮れた。この着替えの下着とパジャマを持って風呂場へ行くべきなんだろうか。べき、ということならそうすべきだろう、しなかったら多分俺は後悔する。したところでそれはそれできっと後悔するけど、でもせっかくライドウさんがその気になってくれたのに断って良いのか。頭では、行くべき、行け、絶対行け、と思ってるのに、足は微動だにしない。床に張りついてしまったみたいに動かなかった。情けねえ、俺って。
落ちつこう、落ちついた方がいい。俺はその場にしゃがみ込んで、はあ、と深呼吸というか深い溜息というか、ともかくそんなようなのをした。
危険なAランク任務へ行くよりもずっと勇気がいる。大人はみんなこんなこと経験してんのか。だから強いんだ。頭では俺の方がずっと複雑なことを考えられても、経験という点では俺は大人の忍びには到底敵わなかった。同じ中忍でも、いや下忍の奴らでも年齢が上なら自分より力量が上なんじゃねえかと思った。
そうなんだ。俺はただ少し物事を深く考えられるというだけなんだ。なのに何故かあのときの試験ではひとりだけ中忍に昇格し、ルーキーなのにすげえ、なんて言われて過大評価されて今過酷な任務に就かされている。何てことだ。
そのことを考えると気が滅入った。でも、じゃあ、俺もこの壁を乗り越えれば1歩大人に近づけるんじゃねえのか。いやそんな単純なことじゃねえけど。けどここで勇気を振り絞ることは結構大事なことなんじゃねえか?これからの任務のためにだ。勇気の必要なことを色々経験しなきゃなんねえんだ、俺は。きっとそうだ。別に欲望に身を任せた結果じゃねえ。全然違う。
しゃがみ込んで着替えと自分の身体を抱えながら、俺は風呂場へ向かう勇気が出るまで待った。あとせいぜい30分のうちに充分な量のそれが出てくることを祈りながら。
 
 
 
 
 
(了)
 
 
 
 
続かないですよ。そうだね、寸止めだね。
結局一緒に風呂に入ることができたのかどうかはご妄想にお任せします。
強引なライドウさんが変態くさくなりましたね。
一緒に風呂に入りたがるシチュが好きなわけじゃないです。イルシカでも似たようなシーン書いたけど。
ただシカマルが「一緒に入りたいのはやまやまだが恥ずかしいので入りに行けない」ともじもじする姿が好きなんだと思います。
ただただシカマルがもじもじしてるだけの文なのにかなり長くなってしまって、本当に済まないと思う。
 
どうでもいい補足
・>
20歳も過ぎてこんなことを考える奴なんているわけがねえ
自分で書いてて痛かったです。シカマルが考えてるほど大人は大人じゃないんだよ!
・>いのを家まで送ってきたって言ってたけど
ライドウさんは本当にいのを家まで送っていたのであってシカマルに会いに来たわけではないんだが家が近所(だと思いたい、奈良家と山中家は)なのでもしかしたらシカマルに会えるかもなあ、くらいの気持ちではあった。
・ライドウさんの忍犬は普段は犬塚家におりツメさんに世話されている。ライドウさんの他の人への呼び方をマネするのでヨシノさんのことはヨシノせんぱいと呼ぶ。秋田犬は最強です。
・書いた人がシカマルの知能は実は大したことないんじゃないかと思ってるわけではなく、本人はあんまり高い自覚がないと良いなと思っただけです。でもIQ200ってはっきり測ることは難しいはずなのでアスマさんがノリで「やべえすげえ結果が出た。IQ200くらいあるんじゃね?」って言って200としてるだけだったら良いなとも思います。しかしこの文のシカマルは、というか当サイトのシカマルは基本すげえ頭弱い子っぽいですよね。知ってる。
 
 
 
 
 
 
どうでもいいおまけ
何度か書き直したためボツにした文章が結構あるのでそこからちょっと気に入ってる箇所だけ抜粋
 
『首のところで、ちゅう、と軽く音がしたので我に返った俺は、ちょっとだけ上体を起こしてライドウさんに吸うのをやめさせた。
別に吸われること自体はまったくかまわねえんだけど、このままでは身体が反応するし、ということは今俺の身体はまだ反応してねえのかというとそうでもないが、これ以上反応が顕著になるとさすがに恥ずかしく、俺がそういうことをして欲しいと望んでると思われたら困るし、ということは望んでねえのかというとそれもそうでもねえんだけど、望んでいることをライドウさんに知られるのは恥ずかしい、エロい子だと思われるだろうから。ライドウさんの手つきや声はとてもエロいのでもしかしたら俺もエロい方が合うのかもしれねえがそこはまだ俺14歳なので勘弁して欲しい。それに今夜会えるなんて思ってなかったから何の準備もしてきていない。』
 
『何で謝られているんだろう、と不思議になり、舌を入れたことなら気にしなくて良いのに、と思ったがたぶんそれは見当違いだろうと見当がついた。』
 
『ライドウさんは俺の耳元でぽそぽそと言った。
「でも、やっぱりお前もまだ14歳なんだなあと今思って、それなのにあんな大変な任務にばかり行かされてたら普通は途中で心が折れるだろうし、いやお前は普通じゃないからああいう任務に行かされるんだけど、あ、いや、いい意味で普通じゃないってことだからな。それで、もっとちゃんと誰かに甘えたりできればいいのにと思うんだが、お前はヨシノ先輩やシカクさんに素直に甘えるような子でもないだろうし、俺がもっともっとお前を支えてやるべきだったなと思って」
それでなんか申し訳なくなった、のようなことを尻すぼみにライドウさんはごにょごにょと言ってちゅうとしてぎゅううううとした。』
 
『ちゅう、とか、時折ぺろ、のようなこともあり、俺はまったくうっとりといって差し支えないような状態になり、しかし自分にうっとりなんて言葉を使うのはやはり差し支えあるような気がし、何というか、とりあえず心地よくなった、ということにして、ようやく一区切りして唇が離れたときにライドウさんの目をじっと見た。何すか?というシグナルのつもりだったが、どうにも気恥ずかしくなったのですぐ目を逸らした。』
 
 
自分はほんと擬音使うの好きだな。知ってたけど。
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