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この漫画の続きです。ちらっと見てからの方が良いかと。
一応あらすじ:イワシさんはイビキさんが好きすぎて困る。猫もらってもらった。
一応あらすじ:イワシさんはイビキさんが好きすぎて困る。猫もらってもらった。
中忍試験、延期されないかなあ。
広い背中を見て、そんなことを思った。
試験が終われば、試験官たちはまた別々の任務へ就いてしまう。
ここ最近毎日顔を合わせていたのに。
せっかく少しだけ話せるようになってきたんだけどなあ。
これからも、何かの用のついでじゃなくても話しかけていいんだろうか?
何の用も無く話しかけるなんて‥‥俺にできるんだろうか。
あー‥‥情けな‥‥。
アカデミーを出て、俺は大きく伸びをした。はあ、と軽く溜息。
は、駄目だ駄目だ、溜息なんて。
慌てて首をふるふると振り、後ろ向きな考えを払った。
男の中の男はこんなことしない、絶対しない。
呆れたような溜息ならかっこいいけど。自分に呆れてんのは駄目だ。
キッ、と背筋を伸ばす。どうも最近猫背になる。疲れてるのかな。
猫、と言えば。
「おい」
「うわっ」
後ろから気配もなく声がして、俺はびくんと身体を強張らせた。
コツン、と後頭部に固い感触。
この声、この声って。
「い、いイビキさん‥‥!」
「ひとりで踊って楽しいのか」
み、見られた。あああ。
どこから見られてたんだ。うわ。イビキさんの前では精一杯行儀良くしてたのに。
俺のバカ。台無しじゃないか。
試験官は家に帰るまでが試験官なのに。
ていうか踊ってたわけでは‥‥。
え、あ、あれ?今後ろ頭に当たった、コツンって、コツンってそれ、イビキさんの手?指?
うわ!頭小突かれた!イビキさんに!!
どうしよう、どうしよう俺。すんごい嬉しい。鼻血出そう。
でもここで噴いたら負けだ。負けっていうかもう人生終わる。終える。
何とか平静を保たなければ。耳とか首とかすっごい熱いけど、これ絶対顔真っ赤になってるよな‥‥かっこ悪い‥‥。
そうこうしているうちに、イビキさんはすたすた歩いていってしまう。
え、もう帰るのかな。イビキさんの家ってどっちだ。
途中まで一緒のふりしてついてってもいいよな?
今はまだ試験官同士だし‥‥それくらい許されるよなあ‥‥?
「あ、の、イビキさん」
「ん」
声が返ってきてホッとする。例え一言でも一文字でも、俺には泣きたいくらい幸せだ。
‥‥情けないけど、でもこのくらいで幸せを感じられる俺は凄く幸せだと思う。
人間ってのは自分が幸せだってことに気付かないから不幸なんだって。
昔の人が言ってました。
「あの猫‥‥元気ですか」
この間、イビキさんとこにもらわれていった猫。
俺が毎日飯やってた猫のうちの1匹だ。他にもまだ4匹いる‥‥。
まあ他の4匹は、安全な場所をわかってるからいいんだけど。
イビキさんがもらってくれた猫、あいつだけは、危険な場所でも走って行っちゃう奴だったから。
子猫のくせに好奇心が強すぎたんだ。心配するくらい。
俺が聞くと、イビキさんはちらっと俺の方を見て、また視線を前に戻した。
しばらく黙られて、俺は不安になって。
でも
「見に来るか?」
次の言葉に気を失いそうになった。
え。え。
え?
来るかって‥‥イビキさん、あの猫どこで飼ってるんだろう。
そりゃ、当然家だよな?俺みたいに外でってことはないよなあ。
ということは、イビキさんの家にお邪魔していいという、こ、と‥‥?
いや、いやいやいや。まさかだろ。そんな。
帰り道で会えただけでも1週間分は運を使ったはずだ。
一緒に猫いじったりじゃんけんしたり、あのときだって相当な量の運を使い果たしただろ、俺。
これから数ヶ月はいいことないような気がしていたのに。
イビキさんの家に行けるなんて‥‥ないだろう、ない。ないない。
そんなの幸せすぎる。何かの間違いだ。だ、騙されないぞ。
「こっちだ」
「あ、」
イビキさんが道を示す。慌ててついていく。
ええ。ついてっていいのか。どこに連れてかれるんだ。
どこだろうとイビキさんと一緒なら行くけど。行くけど俺。
歩幅は当然イビキさんの方が大きいけど、イビキさんはのんびりと歩いてくれる。
俺のため‥‥というよりは、大抵自分より小さい人と並んで歩くから、それがクセになっているんだろう。
この人が気兼ねなく自分のペースで歩けるのは‥‥猿飛上忍、くらいか。
ふたりが一緒にいるところはまだ見たことはないけど、噂によると割と仲がいいらしい。
飲みに行ったりするのかな。そんな場面見たら俺卒倒しそう。
俺も、イビキさんと肩並べて歩けるくらいの男になりたいなあ。
‥‥今から20cmも伸びないだろうけど。
変化とかすればいいのかな。いやいや、俺はあくまで自分の素の身体で勝負したいんであって。
あ、いや、勝負って、勝負下着とかそういう類の勝負ではなく‥‥。
どうでもいいことを考えてしまった。
せっかくイビキさんと一緒に歩いてるってのに。
でも‥‥何話していいのかわからない。
普段は仕事についての話ばっかりだし。
他は挨拶とか、天気の話とか‥‥あと何話したっけ‥‥。
うわ。俺って、人を楽しませるような話できないのかも。
ええ‥‥俺の得意な話題って何だ。
いや、でも、その話題がイビキさんも好きなのかどうかはわからないし。
うかつな話題ふれない。
だからってそんなこと言ってたら何も話せないし‥‥。
とりとめのない、くだらない話でも笑い合えるような仲になれたら最高だけど。
なんて、これは夢見過ぎてるなあ。
結局5分ほど無言で歩いて、目的地に着いてしまった。
ここ‥‥表札が「森乃」ってことは、やっぱりイビキさんの家か?
特別変わったことはない、普通の民家だ。
ひとり暮らしにしては大きいなあ。
まさか誰かと住んでたりは‥‥同棲なんてことは‥‥!
いやいや、イビキさんは身体がおっきいから家もおっきいんだ。きっと。
イビキさんがドアを開けて、ん、と俺を中にうながしてくれた。
は、入っちゃっていいのか。恐れ多い。すっごい恐れ多いんだ。
「お、お邪魔します」
玄関をくぐると、すぐそこに猫が待ちかまえていて、俺の方を向いて、にゃあ、と一声鳴いた。
「あ」
「さすがに覚えてるみたいだな」
犬はけっこう覚えててくれるんだけど。
猫ってどうなのかイマイチ自信がなかった。
イビキさんが横を通って部屋の奥に行くのを見届けてから、猫はもう1度俺に向き直って、にゃあ、と鳴いた。
俺はその場に腰を下ろして猫を抱き上げた。
良かった、この間の怪我治ってる。
あれ?ちょっと重くなった?
何となく丸くなったような。
毛並みも、前はもっとぼさぼさだったのに。
灰色ってよりグレーって言った方が似合うようになった。
かわいがられてるんだ。
かわいがってくれてるんだ。
良かった‥‥。
「そんなとこにいないで上がったらどうだ。茶ぐらい出すぞ」
「ふぇ、あっ、は、はいっ」
うわ。びっくりして変な声出た。ふぇって言った、今。恥ずかしい。
俺は慌てて靴を脱いで、猫を抱いたまま、恐れ多くも部屋の奥に入った。
あんまりきょろきょろ見たらまずい。
でもちらっと見た感じ、ひとり暮らしっぽいかも。
ホッとした。や、ひとりだからって俺がどうこうできるわけじゃないけど!
けどやっぱそういうの気になるだろ‥‥仕方ないだろ。
茶の間にて茶をいただきながら、猫を撫でたりごろごろ言わせたりした。
ふと。
「この猫、名前何てつけたんですか」
「‥‥名前?」
名前‥‥飼ってたらつけるよなあ。
じゃないと呼べないし。不便だ。
「別にいらないだろう。お前みたいに猫に話しかけたりしないからな、俺は」
わ、うわ。猫に話しかけてたとこ見られてたのか。
恥ずかしい。恥ずかしいとこばっか見られてる。恥ずか死ぬ。
「で、でも、何か名前あった方が良くないですか。名無しじゃかわいそうっていうか」
必死に誤魔化しながら、誤魔化しきれてないことはわかっていながら、俺は言葉を続けた。
イビキさんは、ふーん、そういうものか、みたいな顔で宙を仰いだ後、
「じゃあ‥‥『ネコ』」
極めてストレートな名前を打ち出した。
お、男らしい‥‥!!
「ね、『ネコ』、ですか」
「駄目か」
「いえ‥‥」
「それとも『イワシ』にするか?」
「!!‥‥いっ‥‥な、なんで」
「イワシが好きなんだ」
「ん、魚の方だぞ。猫は本当に魚好きなんだな」
「っは」
あ、わ。
びっくりした。本当にびっくりした。
一瞬目の前真っ白になった。頭も真っ白になった。息止まった。
猫が、魚のイワシを、ってことか‥‥だよな!だよなあ!
わ、わかってる。すっごいわかってる。
ありえないもん。いきなり好きとか。どんな夢だよ!確実に夢オチだ、そんなの。
‥‥くそ。俺のバカ。
何を期待したんだ。バカすぎる。
心臓ズキズキ言ってる。内臓全部鷲掴みにされた感じ。
ああもう‥‥顔に限らず、身体中真っ赤なんじゃないか、俺。
どこにそんな血あるんだ。血気盛んな年とはいえ。
とりあえず下向いて顔だけでも隠そう‥‥あー恥ずかしい。俺のバカ。
「あの、でも、魚の方ってわかってても複雑なんで、『イワシ』はやめませんか」
「そうか。じゃあ『トンボ』に」
「何でそこでトンボさんが出るんですか!」
「いや、今窓の外飛んでたから」
「‥‥『ネコ』にしましょう」
アクセントがあっちのトンボだった。
そんなの駄目だ。
「お前はこいつに何か名前つけてたんじゃねえのか」
「え、あ、ええと、『イクラ』って呼んでましたけど」
「イクラ?」
「灰色だから、「ハーイ」って感じで‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
うわあああ、地雷踏んだ。ば、バカ。何言ってんだ俺。
何でわざわざ意味不明なネーミングセンスを露呈したんだ。
最高にハイ!という意味のディオとかの方が良かったかな‥‥いやそんなことはどうでもいい。
「じゃあそれでいいんじゃねえか」
「い、いや、『ネコ』にしましょう、そうしましょう」
「イクラ」
「や、やめてください!」
恥ずか死ぬ、超恥ずか死ぬ‥‥!
猫も猫で、イクラで返事するのやめてくれ、頼むから。
「猫もそっちの方がいいみたいだな」
「や、『ネコ』の方がいいです、絶対。わ、わかりやすいし」
「でも元はお前の猫だろう」
「今はイビキさんのです!」
「いきなり名前変えるのも気が引けるしな」
「いや、でも」
「なあ、イクラ」
「や、も、ほんと、やめてください」
今なら顔で火遁の術が出来そうだ。
だからにゃーじゃないって、返事するなってそっちの名前で。
目を上げたらすぐそこに、サディストな笑みを浮かべた楽しそうなイビキさんがいたのに。
真っ赤で情けない顔の自分を見られたくないって気持ちを選んでしまった俺は、その幸せを見ることができなかった。
見たら今度こそ本当に気を失っていたかも知れなくて。
それでも、少しくらい顔を上げておくべきだったかなあなんて。
自分の家に帰ってベッドに入った後、泣きながら思った。
うわあんって声出して泣きたくなるくらい、幸せな日だったんだ。
これ以上の日はもう来ないってわかっていたけど、それでも幸せだったんだ。
(了)
イビキさんは色々わざと言ってますが、イワシが好き発言は天然です。
天然っていうか、イワシさんの自分に対する気持ちに
憧れと尊敬以外のもんがあると気付いてなかったから。
まさかそっちの意味で取られると思ってなかった。
まあでもイワシさんの反応見て気付いちゃったかもな‥‥。
途中からイビキさんについての描写が台詞以外なくなるのは、イワシさんが見てないせいです。
決して書くの忘れたとかではないんです。ほんと違います。
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