NARUTOのイルカシカマルイワシライドウあたりメインのブログサイト。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
いつからだろう。
愛さえあれば幸せにできる、幸せになれるなんて甘っちょろいことを考えるようになった。
イルカ先生のことはだいぶ前からアスマや3代目から聞いていた。
アスマは弟、もしくは息子のように、3代目は孫のように思ってるとか。はっきりとそう言ってるわけではないが3代目なんかは明らかにアレ孫自慢だ。ふたりとも「かわいくてたまらない」といった風に語るから、一体どんな野郎なんだと興味はあった。
知り合うチャンスは里に戻ってすぐに訪れた。
ナルト、サクラ、サスケの上忍師に任命されて、奴らのアカデミー時代の担任がイルカ先生だったから。ナルトが自己紹介で「イルカ先生」という単語を出して、俺はちょっとだけ反応した。あのイタズラ小僧まで懐いてるなんて、どうもイルカ先生とはただ者ではないらしい。
第一印象は「地味」だった。よくて「普通」。拍子抜けするほど。
ま、笑顔は悪くないけど、もっとかわいい女はいくらでもいるし。
木の葉の里が誇る「コピー忍者」のはたけカカシがわざわざ相手にするような野郎じゃないはずだ。どうでもいいけどこのネーミングセンスはどうかと思う。コピー忍者。
新人7班を中忍選抜試験に推薦したときの反応は、正直少し驚いた。
ヘラヘラ笑って、子どもの相手をしてるか報告書を受理するかのイルカ先生しか見たことがなかったから。
あんな風に自分の意見をぶつけてくる人だとは思っていなかったんだ。
火影様の前で、上忍、それも俺相手に、なんて。
それで少しずつ興味が湧いた。
といっても少しだ。ほんの少し。別に好きだなんて思っちゃいなかった。
ただもっとイルカ先生のことを知りたくなった。
ま、知ったところで中忍の男風情に俺がなびくはずないじゃない?
暇つぶしだね、単なる。
そりゃあ‥‥ナルトに見せる笑顔、アレ。受付で俺に向けるのとは質が違う、本気の満面の笑み。アレ見たときはちょっとさ、何て言うか、かわいいと思えなくもないっていうか。いや!もちろん、もっといい女はいっぱいいるけどね。
とりあえず飲みとか食事とか誘ってみたら、イルカ先生は戸惑いながらも応じてくれた。3回に1回は断られたけど、理由は仕事が忙しくてとかそんなんだった。俺の誘いを断るくらいだからよっぽどなんだろう。
気付いたらアスマからイルカ先生の好みを聞き出していた。
恋愛の好みじゃないよ。食べものとか店の雰囲気とかさ。好きな人間のタイプなんて聞いてどうすんの、俺が。興味ねえし。俺のこと嫌いになる奴なんて滅多にいないしね。ああ、別にイルカ先生に好かれようが嫌われようがかまわないけどさー。
アスマは「お前が人に興味示すなんて珍しいな」なんて言った。
そんなことないよ、俺お前と紅の関係にも興味あるよ。
え、ただの好奇心?それ言うならイルカ先生に対してもただの好奇心だっつの。だって珍しいでしょ、忍びなのにあんな風に笑うの。
あんな風って、だから‥‥純粋、とかそんな感じ‥‥笑ってんじゃねえよ、このヒゲ熊が。
散々笑った後、アスマはぼそっと「イルカに惚れんなよ」とか言い出したから、俺はもちろん反論した。惚れてねえよ!
「そりゃ、まだ惚れてねえかもしれねえけどよ」
意味ありげに言って煙草を吸うアスマに、思い切り蹴りを入れて咽せさせてやったのもいい思い出だ。
時間をかけてゆっくりと近づいた。
週に1、2回誘う程度。
ナルトのことから7班のことから里のことから任務のことから、だんだんと私生活のことも話すようになって。
イルカ先生もうち解けてくれてると思った。ふたりきりのときはしばしば「カカシさん」と親しげに呼んでくれる。俺は、俺の中ではやっぱりイルカ先生は「先生」で。別に呼び捨てにする勇気がなかったわけじゃあない。
でも、ま、楽しい、なんて気持ちにも。
早く会いたい、なんて気持ちにも‥‥。
早く会いたい、なんて気持ちにも‥‥。
どうかしてる。
色街へ出かけて美人と甘いときを過ごすより、ずっと満たされてた。
心の奥があたたかく、ときには熱くなった。
くそ、何だ、この気持ちは。
サスケに「お前の1番大事な人間を殺してやろうか」と言われたときだって、俺はかつての師匠と仲間を思い出したはずなのに。
後にふと「俺はイルカ先生を殺されたらどうするんだろう」なんて考えた。
そうしてすぐにそんな考えは打ち消した。
鈍くさい中忍ひとり、どうなろうが俺に関係ないだろう?
何で俺が、あんな中忍。
惹かれるはずがない。ありえるはずがない。
そう。そう思っていた。
だってイルカ先生は、ほら、中忍で、男で、地味で、普通で、取り柄なんか。
いや、笑顔は確かに優しくてあったかくてかわいくて、かわいいって言ってもアレだ‥‥あー、ま、それくらいは認めてやるよ。生徒からも周りの同僚たちからも信頼されてて、実際授業の目的とか生徒の力をどう伸ばすか、もちろん身体的な技術だけじゃなくて精神的にも成長するように、だとか物凄く色々考えていて、誉めた後は叱る、叱った後は誉める、ってそのバランスが上手くて、生徒の頭を優しく撫でる姿見ると俺もつい撫でてもらいたく
‥‥どうかしてる。
悪口より誉め言葉を考える方が簡単だなんて、さ。
いつから俺は。
こんな。
ああ。
本当は、何度も何度も何度も、イルカ先生のことを好きだと思っていた。
俺がそれを真正面から受け止めるまでには、かなりの時間と葛藤を要した。
でも一旦認めてしまえば、後はもう真っ逆さまに落ちていった。
気付けば俺は帰り道、イルカ先生を待ち伏せしていて、途中まで一緒に行きましょうなんて言って、別れ際に手を握り、「俺はアナタのことが好きです。付き合って下さい」と告げていた。何という捻りのない台詞。普段あんなにイチャパラで研究してるってのに。
イルカ先生はもちろんびっくりした顔をして、何の冗談ですかとかそういうことを言ってた。
俺だってこの気持ちを信じるのに苦労したんだから、何も知らないイルカ先生にいきなり言って信じろという方が無理だ。だからこの反応は予想通りだった。
「好きなんです。信じてもらえるまで何回でも言います。イルカ先生が好きです」
ポカンと口を半開きにしているイルカ先生には、今は何回言っても無駄だろうなと思って、俺はすぐに手を離して1歩下がり、「じゃあ、おやすみなさい。また明日」と言った。そう言えば俺から別れの挨拶を交わしたのは初めてだ。いつもならもっとずっと一緒にいたいから。
イルカ先生は俺を真っ直ぐに見て、「はあ」と首を傾げた。そして「おやすみなさい、カカシさん」と言って俺の家とは別方向に歩いていく。イルカ先生の姿が小さくなって、ついには見えなくなってしまう。俺はそれを黙って見ていた。
それ以来俺は意地もプライドも捨てて求愛行動を繰り返した。
受付、職員室、廊下、校庭、あらゆるところでイルカ先生を見つけては「好きです」と伝えた。それだけではあまりに芸がないので、時にはもう少し回りくどい言い方をすることもあったし、手に触れたり軽く後ろから抱きしめたりもした。さすがにふたりっきりのときにそんなことをしたら、理性がふっとんで衝動が溢れてくることはわかっていたので、大抵は人が大勢いるところで冗談めかしてやっていた。
「はたけカカシ」が「うみのイルカ」を狙っているという事実は、里の忍びには大体広まっただろう。それでイルカ先生に手を出す輩がいなくなればいいんだけど。
「はたけカカシ」が「うみのイルカ」を狙っているという事実は、里の忍びには大体広まっただろう。それでイルカ先生に手を出す輩がいなくなればいいんだけど。
イルカ先生の反応は思わしくなかった。ま、これも予想通りだ。
告白の返事は「ごめんなさい」だったしその理由も聞いたけど、俺にはそんなもん関係なかった。
イルカ先生は「本気の恋愛」をしたことがない。絶対そうだ。
経験のある人なら、そんな打算的な恋愛など本当の恋愛だと認めないだろう。イルカ先生に本気の恋をしてしまった俺にはわかる。あんな風に、「好きになる相手はこういう人じゃなきゃ」なんて考えてするもんじゃないのだ、恋ってのは。
俺も似たようなことを考えていたけど、実際には今、ちゃんとイルカ先生に恋してるじゃないか。
イルカ先生は俺に、どうして自分のことが好きなのか、自分のどこが好きなのかとかは聞かない。
聞いてくれたら何時間だって、1晩中だって語る自信があるんだけど。
まるでそんなこと聞いてもどうにもならないとでも言う風に、何も聞かない。
無関心ってそれ、嫌われるより酷いんじゃないの。
こっちから言いきかせないと駄目なのかなあ、なんて思い始めた頃。
ナルトが修行のため里を出た。
その隙に付け入ろうなんて思ってなかった。
純粋に、イルカ先生も寂しくなるだろうなあって思って、励ます意味で温泉に誘ったんだ。イルカ先生、湯治が好きだって言うから。ま、でも「温泉に行く」というところにはちょっとだけ下心はあった、うん。それは認める。
声を掛けたとき、イルカ先生の顔には愛想笑いすらなくて、俺は内心ヒヤヒヤしていた。うわあ、機嫌悪そう。返事もいつも以上に冷たいし、イルカ先生の頭を撫でた俺の手は振り払われてしまった。そんな風に拒絶されたのは初めてだった。呆然とイルカ先生を見つめた。イルカ先生は、しまったことをしてしまった、みたいな顔をして俺を見ていた。
俺は少しだけ嬉しかった。この頃ずっと目合わせてくれなかったから。イルカ先生の真っ黒の瞳に俺の姿が映るのを見るのが好きだった。
まー長い時間見つめ合ってるわけにもいかないので、俺は謝ってその場を後にしたよ。後ろ髪引かれたけど。
その日はどこ行っても誰かしらにからかわれた。アスマなんかは物凄い上機嫌だった。
アスマは俺がイルカ先生に本気になったのを知ると慌てて止めに来たもんだ。イルカをおめーの毒牙にかけるわけにはいかねえ、とか言って。
失礼な。お前は紅のことでも考えてりゃいーんだ、口出すな。
帰り道でイルカ先生を待ちぶせするのはもー慣れっこだ。この2ヶ月くらい頻繁におこなってる。日課と言ってもいい。イルカ先生は俺の声を聞くと呆れたような顔をするし、会釈するだけだし、ほんのちょっとの距離を会話もなく歩くだけなのに、俺はこの時間が1日のいつよりも好きだった。
この100mだけ俺はイルカ先生を独占できる。滅多に人が来ない道。毎回毎回この100mは精神修行みたいなもん。うっかり襲いかかってしまいそうになる。
その夜だって。ちゃんと謝って、謝るだけで終わるつもりだった。いつも通り余計なことは何も言わず、せず。
なのにイルカ先生の冷たい態度を見てたら、何か、こー。
ムラムラしたって言うか。別に俺マゾじゃないと思うんだけど。どっちかっていうとサドだと思ってたんだけど。もしかして違うんだろうか。いや、抵抗されると燃えるタイプだから違わないだろ。
手を取って、抱き寄せて。胸の鼓動を聴かせて、囁いて、手の平にキスを落とした。それだけで我慢できたのは奇跡に近かったんだ、俺の中では。
なのにイルカ先生には許してもらえなかった。結構キツイこと言われた。
人としての神経、か。やっぱり俺にはそんなもんないんだろうか。
嫌がるイルカ先生を無理矢理、とか考えてしまう。傷つけたい訳じゃないのに。幸せにしたいのに。
そういえばオビトにも言われたっけ。「おめーには心の優しさってもんがねーのか」と。
嫌がるイルカ先生を無理矢理、とか考えてしまう。傷つけたい訳じゃないのに。幸せにしたいのに。
そういえばオビトにも言われたっけ。「おめーには心の優しさってもんがねーのか」と。
俺って最低ってやつですか、イルカ先生。
もちろんあれくらいで諦めるタマじゃあないからね、俺。
ま、このままだと俺の印象最悪ってのは間違いない。無関心よりはマシとはいえ、嫌われてる状況は喜ばしいものじゃない。
もう1度謝りに行こう。そしてこれからは強引に抱きしめたりしませんと約束しよう。
守れるかどうかは、わからないけど。
次の日早速受付に顔を出した。朝の早い時間、思ったより人はいたけどそんなのかまってられない。
イルカ先生は姿を見るまでもなく、気配で俺が来たことを察知したようで、こっちを見向きもしなかった。んー。
「イルカ先生」
呼んでもイルカ先生は顔を上げない。少し眉を動かしただけだ。
「イルカ先生?」
もう1度呼ぶと、顔をしかめて「聞こえてます、何ですか」とほとんど唇を動かさずに言った。
その仕種に、何故か俺はエロスを感じてしまった‥‥え、何、コレ。
神経を集中させてイルカ先生の唇を見つめた。別に何の変哲もない上唇と下唇。濡れてるわけでもぷるぷるしてるわけでもない。なのに無性に吸い付きたくなる。不思議だ、恋ってのは。
呼んだだけで黙ってる俺に業を煮やしたのか、イルカ先生は目だけ俺の方に向けた。
ちょっと、それ、上目遣いって言うんだよ。そんな目で俺を見たら駄目だよ。‥‥いや、嘘、もっと見て下さい。
「イルカ先生、好きです」
「それはもう聞きました」
やはり冷たい返事。あー、身体の奥がきゅんとする。
「俺、気がおかしくなりそう」
「もうおかしくなってるでしょう」
俺は受付のテーブルに手を付いて、少し身を乗り出した。
その動作に怯んだのか、イルカ先生は顔を上げて俺を見た。
ああ、もっと見て、イルカ先生。俺を見て。
「無理矢理して、ごめんなさい。でも俺はイルカ先生のことが好きだから。大好きだから。アナタに触りたいし抱きしめたいし、キスしたい。もちろんそれ以上も」
一気に言って、俺は口布を顎まで引き下げ、イルカ先生に笑いかけて、
「俺が欲しいのはアンタだけです」
身をかがめ、その手に口づけた。
また怒られるかな。もっと嫌われたかな。
そんな危惧はイルカ先生を見たらふっとんで、どうでもよくなった。
俺の言葉と行動に、初めて顔を赤らめるイルカ先生が、そこにいた。
PR
この記事にコメントする