NARUTOのイルカシカマルイワシライドウあたりメインのブログサイト。
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アナタのためなら何でもします。
だから、愛してください。俺も精一杯愛します。
「俺、嘘は嫌いです」
止めどなく溢れる想いを、たった三言の台詞でしか言い表せなかった情けない俺に、イルカ先生が言ったのはこんなことだ。
「本気です、イルカ先生」
俺は掠れた声で言った。ほとんど哀願していた。
やっとのことで打ち明けた想い。
受け入れて貰おうと必死だった。
イルカ先生はいつも通りの、人をあたたかくする優しい笑顔で、じっと俺を見つめた。
声も表情も雰囲気も普段のイルカ先生だった。
それが逆に恐怖だった。
「じゃあ」
「その写輪眼、捨ててください」
笑顔。笑顔。笑顔のまま。
太陽を思わせる笑顔のまま、イルカ先生が言った。
「俺のために、その写輪眼捨ててください。できるんでしょう?」
首を傾げて。
さあこの宿題をやってごらん、昨日の授業を聞いてたらできるだろう?
そんな風だった。
この人は。
どこまで知っていて、そんなことを言うんだ?
何も知らないだろう?
親友が自分に遺してくれたこの眼のことを。
毎朝慰霊碑に立つ自分のことを。
怒りが湧くのを感じた。
どうしようもなく愛しい人への。どうしようもなく哀しい怒り。
「‥‥やっぱりできないじゃないですか」
静かに、言う。
「別に責めませんよ。アナタの選択は正しいです。
アナタはその眼と共に戦うべきだ。‥‥オビトさんも、それを望んでいた」
――何故その名を?
アンタは知らないんじゃないのか。
知らないからそんなことを言ったんじゃないのか。
知ってて言ったのか。
どうして。
どうして。
アナタは、どこまで。
「どこまでもです」
イルカ先生は無邪気に笑ってみせる。
いつも通りの。
少しもおかしいところは見あたらない。
「アカデミーの教師なんてやってるとね、洞察力は身に付くものですよ。たかが中忍でもね。
俺はアナタの気持ちにも気付いてました。いつも俺の手を見てたでしょう?」
「いつも俺の手を握りたそうにして。普段ポケットにつっこんだままでいる手を、俺の前ではぶらぶら振ってましたもんね。そりゃ、気付きますよ」
おかしそうに。
子どもの些細ないたずらを見つけたときのように、笑う。
「中忍試験にナルト達を推薦したときも――覚えてますか?
俺、わざとキツイこと言った‥‥つもりなんですけど。気付いてもらえましたかね。
それともあんな程度じゃ弱すぎましたか」
「もうわかったでしょう?俺はアナタとは違う。
俺はアナタが思ってるような人間とも違う。
‥‥ああ、そんな顔しないでください。可哀想に、カカシさん。
どうしてもと言うなら、だから写輪眼を捨ててきてください。
アナタの力なら簡単でしょう、片目をえぐるくらい。
そうしたら俺は責任取って、一生アナタの面倒見ます。一生愛します。火影様に誓って」
そう言って、イルカ先生は踵を返した。
最後まで普段通りの笑顔のまま。
どんなに探りを入れても、おかしな部分は欠片も見つからなかった。
ただ会話の内容が異質な以外は。
写輪眼とイルカ先生、どっちを取るか‥‥だと?
不公平じゃないか。
あまりに理不尽じゃないか。
オビトは命を絶つことで、俺の心に一生消えない呪縛をかけた。
消したいとも、消すつもりもない、深く愛しい呪縛。
死者を思うことと愛する人を想うことは、平行線だ。
オビトはもうこの世にいない。
唯一、左目だけを遺して。
ようやく前に進める気がしていた。
死者からの呪縛を、呪いのようだなどと思うことなく。
縛られているなどと思うことなく。
あの人を想う気持ちは間違いなく「生」を実感させてくれたから。
気付いていたなら、早く止めてくれれば良かったのに。
どうして、今。
俺の気持ちがどうしようもないとこに来たときに、そんなことを。
左目以外は何だって喜んで捧げられるのに、どうして。
笑えない、我が儘。
それでもアナタを愛しいと思う。
(了)
(了)
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